国立大の運営費削減は医療費以上に過酷 [BM時評]

 しばらく医療の問題に目を奪われていたら、3日の日経朝刊で「国立大運営費、学部ごと評価し交付金に差 文科省方針」を見て唖然としてしまいました。話題になっている社会保障費の毎年2200億円削減は、7000億円ほどの自然増に対するものですが、国立大運営費は毎年1%一律に純減する枠組みが押しつけられており、「それでも無理」との声が大きいのです。ところが「2010年度から、教育や研究の実績を学部ごとに評価して交付金の配分額に差を付ける方針だ。交付金を一律に年1%削減する現行制度を見直し、大学ごとに削減率を変えることも検討する。配分にメリハリを付けるとともに、成果主義を採り入れて大学間の競争を促す」とは1%を超える削減をされる大学が出ることを意味します。

 「日本の大学の現在―競争による競争のための競争の減失?」が「法人化以後、国立大学の運営費交付金は毎年1%ずつ削減されており、交付金だけで人件費を充当することができない大学がほとんどである。大学は自助努力で『競争的研究資金』を獲得して、運営の資金をも確保しなければならない。それは、いわば『基本給』が削減され、足りない部分は『歩合制』となり、同じ仲間との競争のなかで『能力のある者』が高い報酬を獲得できるというドラスティックな仕組みである」と指摘しています。おまけに競争がさらに激化するとしても、どこが勝かは実績主義で評価している以上、旧帝大中心の有力大に決まっています。

 昨年の今ごろ「基本給」に当たる国立大運営費の競争資金化には無理があるとの悲痛な叫びを聞いた記憶がありますが、文科省には全く届かなかったようです。医師の人件費が賄えないケースと違って、大学運営費が足りないなら教員を減らしてでも授業の形を取り繕えるからでしょうか。「学校教育費の対GDP比」を見ていただければ分かるように、日本の公的支出は3.5%と29カ国で最低から2番目なのです。まだ引き下げよ、しかも毎年、不安定に続くというのは過酷に過ぎます。