前年度比1兆円増で伸びる医療費の裏側 [BM時評]

 厚生労働省が2007年度の「医療費の動向」をまとめたとのニュースが流れました。「中央社会保険医療協議会 医療費の動向等について」に詳しい資料があります。33兆4000億円で前年度比3.1%、約1兆円の増加です。厚労省は「2007年度は制度改正がなく、医療費の伸びは従来と同水準となった」と分析しているのですが、こういう中身のない、客観的に分析できない言い方にはうんざりです。「平成19 年度の医療費について」からひとつ表を引用します。「表10-2 1施設当たり医療費の伸び率(対前年度比)」です。  「地方公営病院は末期的状況」にあるとおり、2006年度には「制度改正」で無理矢理、医療費は抑制され地方公営病院は77%が赤字のありさまになりました。上の表で公的病院の「平成18年度 ▲1.0%」という数字がその痛みを表していると思います。収支とんとん、格段、経営努力をする余地がない状況で1%も売り上げが落ちれば、どんな企業体でも赤字転落が増えます。厚生労働省は「制度改正」が無かった2005年度(平成17年度)並になったと主張するけれど、大学病院も公的病院も法人病院も2007年度は随分、大きな伸び率になっていると見えます。

 医療費の単価をいじって赤字転落にさせるような無茶をしたら、人間が働き、生きている組織である以上、病院にも自己防衛の本能は働きます。全体として治療に掛かる日数は減ったけれど、1日当たり医療費が伸びて結果として全医療費は増えてしまうことになっています。それを「医療技術の高度化」と呼ぶのはためらわれます。先日の「医療水準は全員参加の見積書で決定を」で指摘したように、国民全体で納得して支える医療体制を作らないと、年に1兆円も訳が分からなく医療費が増え続ける事態は収まらないでしょう。