団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

うどんのコシは素人でも自由自在 [BM時評] (2008/08/14)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 エキサイトのニュースをたまたま見て「うどんはなぜ『冷凍』が美味いのか」が目に付きました。自分で茹でるうどんは乾麺でも生麺でもやわらかくなってしまうが、冷凍うどんはコシがあって良いとの疑問から出発しています。トラックバックもたくさん来ていますが、元記事筆者を含めどれも、うどん、麺類の科学がお判りでない方ばかりです。

 遠い昔に科学面記事にしたので、現在では記事データベースにも収録されていませんが、うどんのコシは顕微鏡で観察可能です。茹で上がったうどんを素早く切断して瞬間冷凍します。手打ちうどんの店で、うどん生地を何度も伸ばしては畳み、あるいは足で踏んでいるのをご覧になっているでしょう。小麦粉にはグルテンというタンパク質がたくさん含まれており、デンプンの部分と折り重なって複雑な組織を形成します。

 デンプンは茹でる前は全て硬いベータの状態ですが、茹でることで消化がよいアルファ状態に変わります。断面の観察でデンプン粒の何割がアルファ化していれば、どれくらいのコシがあるか判断できるのです。グルテンとデンプンによる組織をどれくらい複雑に造るかで、味わいは変わります。極端なケースとして、全く組織を造らず、ところてんのようにお湯の中に1本で押し出してしまえば全部アルファ化した、ぼわっとした麺になります。手延べ素麺の場合は、時間を掛けて伸ばしていくことでグルテン組織が縦に通っていくそうです。

 食す上で大事なことは、良い組織が出来上がっている麺は一度、アルファ化した部分でも氷水で必要なだけ締めてベータに戻せるのです。茹ですぎたと慌てて食べることなく、ボールに氷水を入れて麺を締め直しましょう。どれだけ締めるかは、つまみ食いしながら判断してください。もし氷水に入れっぱなしにすれば、食べられないくらい硬く出来ます。そうです。素人でも自由自在なのです。

 冒頭の記事は「残念ながら、『冷凍うどん』が乾麺よりも生麺よりも美味しいのは、製法も茹で方も研究されたうえで、『すでに完成された状態』をつくってくれているから」「乾麺や生麺は、美味しさを『茹で方』に委ねられる部分が多く、自分で台無しにしちゃってるようです」とギブアップしていますが、とんでもないことです。冷凍うどんより遙かに美味い麺を我が家は何十年も食べています。大量の氷が使えなかった昔は、経験から得た予定調和で早めに火を止め、水にさらすのが腕でしたが、氷が豊富な今では何の心配もありません。

 この暑さです。冷えて、きりきりした素麺、冷や麦、冷やしうどんは素敵ですよ。

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