団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

『ハドソンの奇跡』に見る米ネットの活性 [BM時評] (2009/01/18)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 USエアウェイズのエアバスA320型機が離陸直後にエンジン2基の推力を失い、ニューヨーク市マンハッタンのハドソン川に不時着しながら機長の『神業』で死者・重傷者ゼロの奇跡を呼んだニュースは、冬の寒さ以上に冷え込んだ世界に何かホットなものを流してくれました。同時に日本語ネットの世界では物足りない情報しかなかったのに、米国のネットは活性度が高いと思えた今回の事故でした。

 何と言ってもお膝元、ニューヨークタイムズ紙のウェブ記事構成が秀逸でした。「After Splash, Nerves, Heroics and Comedy」Multimedia欄にある「Interactive Graphics」と「Video」は必見です。良くできたグラフィックスは離陸から不時着水までの数分間の出来事を立体的に経時的によく把握させてくれますし、沿岸警備隊撮影のビデオは着水の瞬間から乗客が機外へ脱出する様子、近くのフェリー船が急行するところまで映っています。記事の構成も十分です。他のネット媒体でもカラー写真のスライドショーなど豊富でした。

 「奇跡のハドソン川着水機、みごたえのあるネット新聞の記事構成」(生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ)がニューヨークタイムズを評して「これなら、新聞よりもネットのほうが動画もあるし、カラー写真もたくさんあるし、はるかに見ごたえ、読み応えがあります」と激賞している通りです。「日本のネット新聞の実力とは技術的に差があるように見えました。理由はわかりませんが、動画や鳥瞰図や写真が豊富でかつそれらが軽いのです」「日本ではまだ新聞社の上層部がネットに虎の子の記事をだすことにかなりの抵抗があるのでしょうか。朝日も読み応えのある記事はネットでは読めません」

 その通りで、国内紙のウェブはニュースのほんの「さわり」しか出していないので、こういった大事件では非常に物足りない思いをします。ニューヨークタイムズは紙とネットの編集部を一体化させるところまで踏み込んでいるので、今回のように手間を掛けた、優れた構成が出来たのでしょう。

 目撃した市民がマスメディアに頼らずに現場写真の第一報を流せたというのも特筆物です。「航空事故の現場写真,Twitterで第一報が」(メディア・パブ)が「15日にニューヨークのハドソン川に不時着水したU.S. Airways 機の航空事故でも,現場に向かっているフェリーに乗船していた市民(Janis Krums氏)がiPhoneで現場写真を撮り,すぐにTwitterで以下のように発信した」と伝えています。不時着機の周辺には何もありませんから、沿岸警備隊ビデオがとらえたフェリー船からの写真です。携帯電話のカメラで撮って、SNS的にも使われる簡便ブログ「Twitter」にアップロードしています。

 国内では「画像共有サイトやSNSへ、写真を簡単アップロード “サイバーショット”Gシリーズ | プレスリリース | ソニー」のようにパソコン無しでもネットへ写真を送り出せるデジカメが現れました。市民とマスコミが対等に競う時代が来てしまったようです。

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