団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

新型インフル、WHO初動遅れと国内の前のめり [BM時評] (2009/05/03)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 メキシコから発した新型インフルエンザの騒ぎは拡大・長期化が必至の情勢になってきました。ここに至って《新型インフル、WHOの初動遅れに批判も 「報告に対応せず」》(日経新聞)のような指摘が表面化してきました。メキシコの国立感染症センター長が「インフルエンザの発生を4月16日にWHOの地域組織に報告したが、WHOは対応しなかった」といい、新聞紙面にある情報では「チャン事務局長に情報が入ったのは、別の用件で米国を訪れた4月24日」だそうです。この24日から直ちに立ち上がったのは立派ですが、1週間以上、メキシコ情報は店晒しになっていたのでした。確かに何か打つ手はあったでしょう。

 この騒ぎを機に「Japan Blogs Net」に入れさせてもらっているブログ「感染症診療の原則」の「学内で感染が広がった高校での調査結果(ニューヨーク)」で教えてもらった高校の「ニューヨーク市の調査結果」を見ましょう。メキシコに行った生徒は6人、教師は1人なのに、全体の3分の1、700人を超える生徒・教師が風邪の症状を起こしていました。生徒の発症ピークは4月23日の254人です。上の数字は確定診断をしていないので正式な患者数とカウントされていない方が多いものの、米国の患者は大半がこの高校関係です。メキシコからの発生情報を生かして注意を呼びかけることは出来たかと思えます。そして、新型だけあって罹患率は確かに高いです。

 一方、国内の情報の出方は前のめりが過ぎると感じます。横浜の高校生、名古屋の会社員、横田基地の乳児と、患者発生国から来ていてインフルエンザの症状があるだけで診断も出来ていない段階で、厚生労働相まで出て発表するのは行き過ぎです。翌日にはいずれも在来インフルエンザと判定されました。これからゴールデンウィークの終わりには多数の観光客が帰ってきます。風邪の症状を訴える人がかなりいて不思議ではありません。それを一々発表して騒ぐのでしょうか。

 「怖いのは深夜の記者会見と報道」(感染症診療の原則)は厳しい。「フェーズ4以降訓練ではプレス発表訓練も入っていましたが、こういうのやっちゃだめですよ、というサンプルで示した記者会見そのものです」「まず、深夜に大臣が言うほどの内容か?」「それから、すごーーーーーく基本的なことですが、感染症で『シロ』『クロ』という表現はしないというのは常識。どういう印象を与えるか」「NHKはNHKで疑い患者が『確認』された、疑い患者がいることが『確認』された、などかなり混乱してしゃべっています。しかもずーっと繰り返し」「この時間にこのレベルの内容を伝えるのに10−15分遅れても世の中的には何もかわらないので原稿をちゃんとつくってから読んでほしいものです」

 もっとも、朝日新聞の2日付3面を読むとリスクマネージメントの専門家らしい人が「政府は情報を全部国民に流し、国民はあまり敏感になり過ぎずに受け止めるべきだ」と恐ろしいとコメントをしているようです。普通に生活している人に次々に流れる生情報を読み解いて考えろとおっしゃいますか。マスメディア関係者を含めて、この国の専門家は本当の修羅場で大丈夫なのかなと、心配になるこの数日でした。

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