新型インフル感染確認は氷山の一角の一角 [BM時評]

 新型インフルエンザの国内二次感染者が確認と伝えられた途端、感染者数は一気に膨れあがってしまいました。兵庫も大阪も高校での集団感染です。神戸も大阪・茨木も11日からインフルエンザの欠席が目立ち始めたといいますが、兵庫の場合、8日にあったバレーボール部の交流試合が感染の場になっていますから、連休中には既に二次感染による発病が始まっていたのでしょう。国外から持ち込まれたのは、潜伏期を考えるとさらに数日前です。政府が検疫による水際作戦に夢中になっているとき、既に地域での感染は始まっていたのです。そして、表面化してみると、具合が悪い生徒の数は数十人、あるいは100人を超える勢いで、全員入院させて隔離するのが無理な規模に迫っています。

 最も名の知られた医師ブログのひとつ「新小児科医のつぶやき」は神戸で開業している方なので、この事態を「いきなり爆心地」と表現、いやはやという印象。感染確認当日のエントリー「足らんだろうな」「爆心地情報」「新型インフルエンザ第二段階の対策」と翌17日の「感染地情報」にはコメント欄を含めて、ここまで広がってからの現場の対処の難しさがよく出ています。神戸市医師会新型インフルエンザ対策緊急会議の討議で「もう既に感染はかなり広がっていると考えられるので、通常の季節性インフルエンザと同様の対処としてはどうかの意見も」との情報もあります。感染者が入院する病院の勤務医は「もう入院患者は神戸市内で40人をこえており、感染者が隔離入院される措置もあとわずかとおもいます。隔離する場所がありません、というか隔離しても無駄ということで」とコメントしています。

 「今の厳戒態勢のままにしておけば、新型インフルエンザに対する政治評価として傷は付きません。一方で厳戒態勢の継続は医療にも、国民生活にも大きな影響を及ぼします。医療的には発熱患者をすべて発熱外来で対応し続ける事への無理です。たとえば小児科患者の多数はそもそも発熱患者ですから、渡航歴の縛りがなくなれば、どっと押し寄せます。長期間対応できるかの問題は必ず出てきます」

 新型は鳥インフルエンザで想定したほどの強毒性ではなく、通常の季節性に比べ数倍程度の毒性と言います。それでも、それなりの死者は出ますが、国民生活ががたがたになる被害とどうバランスをとるか、考えるべき時期が早くもやってきています。

 共同通信の「新型インフル3分の1が発熱せず 米医師が報告、早期発見困難に」が「発熱はインフルエンザの感染を見分ける重要な指標とされる。報告が事実なら、感染の早期発見と拡大防止が、これまで考えられていた以上に困難になる可能性がありそうだ」と伝えたように、新型インフルエンザは厄介な性質を持つようです。これでは軽症で発熱無く治まってしまった患者は全く見えない存在です。厳戒態勢にどういう意味があるのか考えさせられます。

 「感染症診療の原則」の「推定10万人 (米国CDC試算)」は4700人と報告された米国の患者数が実際は10万人くらいと米疾病対策センター(CDC)がコメントしていると書いています。どういうことでしょう。「感染症サーベイランス」に、報告された症例以外に多数の未確認例が存在することを表す模式図があります。「受診したが未検査」が大阪の例で、保健所に集団発生を届け出たのに「海外渡航歴なし」だったために相手にされなかったケース。発熱のない軽症者は「症状はあるが未受診」に入るでしょうか。

 「"新型インフル患者発生"で、ハイリスク組は・・・ 」(一歩一歩!振り返れば、人生はらせん階段)が「症状は、通常の季節性インフルエンザと同程度ということなので、健常者はそんなに恐れることはないだろうが、慢性病を抱えている患者はそうはいかない」「"健常者は感染しても死に至るようなことはない。アチラで感染して死んだのは、喘息や自己免疫疾患などの患者です。"と報じられたハイリスク組には緊張が走る」と案じ、持病薬の備蓄など万一の時の心配をされています。

 免疫がない新型の罹患率の高さは高校での集団発生で明らかです。専門家の間では来るべき新型鳥インフルエンザへの格好の予行演習だったと、ちょっとほっとした見方が広まっているようですが、収束をどうするのかまでは道筋は見えていません。

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