足利事件の衝撃。事実の『観測』には誤差 [BM時評]
女児殺害の犯人として17年半も逮捕、服役させられていた足利事件の菅家利和さんが再審裁判の開始を待たずに釈放されました。再審請求でのDNA鑑定やり直しにも自信満々だった検察側が、「DNA型が一致しない」即ち「犯人ではあり得ない」との鑑定結果に、完全に白旗を掲げたためです。そして、新たな報道で事件当時のDNA鑑定のいい加減さ、それに寄りかかっての自白強要があった点が明らかになってきました。人間は過去にさかのぼって事件発生現場を確認できません。様々な「観測」手段を使って当時を推し量っているに過ぎません。使える観測手段ごとに誤差があり、それをわきまえた謙虚さが決定的に欠けていたケースでした。
「弁理士の日々」の「足利事件のDNA鑑定 」は「『当時の技術では、犯人と菅家さんは同じDNA型(仮に[A]とします。)と鑑定され、その鑑定自体は正しかったが、最新の技術では、犯人はA1、菅家さんはA2であって別人であった』という論理かと思っていました。ところがそうではなく、『当時捜査で使われたと同じ方法でDNA鑑定を行ったところ、菅家さんはBであり、犯人はCであった』というのが実態らしいですね」と驚きます。
弁護側鑑定人の本田克也・筑波大教授はBをAと誤ったこともさることながら、BとCを同型とした二重の誤りが大きな勇み足になったと指摘しています。遺伝子DNAの鑑定は違いが分かりやすい部分を切り取って比べますが、旧鑑定書の写真では「これでよく同じ型と見えたな」というレベルだったようです。
Japan Blogs Netから拾うと、「中山研一の刑法学ブログ」は「足利事件の教訓」で「この事件では、DNA鑑定が有罪の証拠とされただけでなく、嘘の『自白』を引き出すために利用されたという事実に注目すべきです」「菅谷さんは、DNA鑑定を突きつけられて自白を迫られ、暴行も受けたとして、当時の警察・検察官を絶対に許さないと語っています。今こそ、『代用監獄』における密室の長期間にわたる取調べそのものを廃止する決断が必要なのです」と指摘しています。捜査過程の可視化(=全面ビデオ撮影)を押し進めるべきなのですが、法務大臣は早速、消極的な姿勢を見せました。
「小林恭子の英国メディア・ウオッチ」が「足利事件とDNA鑑定―英国関連」で英国事情を伝えているのも注目です。「英国ではDNA鑑定が初期捜査の重要な部分を占めているようだ。現在、少なくとも400万人分のDNA情報を持っている」「問題なのは、警察で取り調べを受けた人はほぼ全員がDNAのサンプルを取られてしまうことだ。例えば飲酒運転、あるいは町で10代の少年少女が喧嘩をしていて、これをつかまえた場合もサンプルを取る。ただ単に、喧嘩に巻き込まれた人、その場にいた人もとられる場合がある。つまりは、無実の人のサンプルも、『いつか悪いことを起こす人』のサンプルとして取得されてしまう」
英国に比べ、数万人分しかないDNA情報を持たない日本は発展途上段階ですが、足利事件のような鑑定精度問題を越えた、次の場面で、DNAという究極の個人情報をどう扱うかが浮上します。日弁連は2007年末に「警察庁DNA型データベース・システムに関する意見書」を出して、プライバシー権や自己情報コントロール権を侵害することがないよう、国家公安委員会規則ではなく、法律による構築・運営をすべきだと主張しています。警察庁側では「DNA型情報の活用方策について」に資料が集められています。
「弁理士の日々」の「足利事件のDNA鑑定 」は「『当時の技術では、犯人と菅家さんは同じDNA型(仮に[A]とします。)と鑑定され、その鑑定自体は正しかったが、最新の技術では、犯人はA1、菅家さんはA2であって別人であった』という論理かと思っていました。ところがそうではなく、『当時捜査で使われたと同じ方法でDNA鑑定を行ったところ、菅家さんはBであり、犯人はCであった』というのが実態らしいですね」と驚きます。
弁護側鑑定人の本田克也・筑波大教授はBをAと誤ったこともさることながら、BとCを同型とした二重の誤りが大きな勇み足になったと指摘しています。遺伝子DNAの鑑定は違いが分かりやすい部分を切り取って比べますが、旧鑑定書の写真では「これでよく同じ型と見えたな」というレベルだったようです。
Japan Blogs Netから拾うと、「中山研一の刑法学ブログ」は「足利事件の教訓」で「この事件では、DNA鑑定が有罪の証拠とされただけでなく、嘘の『自白』を引き出すために利用されたという事実に注目すべきです」「菅谷さんは、DNA鑑定を突きつけられて自白を迫られ、暴行も受けたとして、当時の警察・検察官を絶対に許さないと語っています。今こそ、『代用監獄』における密室の長期間にわたる取調べそのものを廃止する決断が必要なのです」と指摘しています。捜査過程の可視化(=全面ビデオ撮影)を押し進めるべきなのですが、法務大臣は早速、消極的な姿勢を見せました。
「小林恭子の英国メディア・ウオッチ」が「足利事件とDNA鑑定―英国関連」で英国事情を伝えているのも注目です。「英国ではDNA鑑定が初期捜査の重要な部分を占めているようだ。現在、少なくとも400万人分のDNA情報を持っている」「問題なのは、警察で取り調べを受けた人はほぼ全員がDNAのサンプルを取られてしまうことだ。例えば飲酒運転、あるいは町で10代の少年少女が喧嘩をしていて、これをつかまえた場合もサンプルを取る。ただ単に、喧嘩に巻き込まれた人、その場にいた人もとられる場合がある。つまりは、無実の人のサンプルも、『いつか悪いことを起こす人』のサンプルとして取得されてしまう」
英国に比べ、数万人分しかないDNA情報を持たない日本は発展途上段階ですが、足利事件のような鑑定精度問題を越えた、次の場面で、DNAという究極の個人情報をどう扱うかが浮上します。日弁連は2007年末に「警察庁DNA型データベース・システムに関する意見書」を出して、プライバシー権や自己情報コントロール権を侵害することがないよう、国家公安委員会規則ではなく、法律による構築・運営をすべきだと主張しています。警察庁側では「DNA型情報の活用方策について」に資料が集められています。