団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

第179回「新型インフル、国内の持続的感染が確定」 (2009/06/11)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福岡と千葉・船橋で新型インフルエンザ集団感染が急拡大しています。6月5日時点では福岡1例、千葉6例に止まっていた感染者数は、10日昼には福岡42例、千葉24例に膨れあがりました。やるべき遺伝子検査を極力制限して患者の多くを季節性インフルエンザと誤魔化し、やり過ごそうとしている厚生労働省の対応が破綻しました。神戸・大阪が独自の判断で新型蔓延を検出し、収拾したのを迷惑そうに見ていた政府は、今度は自らの問題として蔓延する局面に対処しなければなりません。

 特に福岡では地元のメディア「データマックス」が「福岡市、遺伝子検査拒否で新型インフル感染拡大!」で「板付中学校の生徒に新型インフル感染が確認されたのは今月6日土曜日。板付地区ではその1週間ほど前から感染が疑われる患者が続出、診察した複数の医療機関は博多保健所に対し、遺伝子検査を要請していたという。しかし、保健所側は遺伝子検査を実施しようとせず、季節性インフルエンザとして対応するよう指示を繰り返したとされる」と感染拡大を放置した「行政の犯罪」を告発しました。

 西日本新聞は「福岡市の新型インフル集団感染 中学生と米国人のウイルス遺伝子ほぼ一致」と報じました。「米国人は発症前日の5月23日に中学生が通う板付中校区内の飲食店で食事をしており、県は『場所的に(飲食店で)感染が広がった可能性が一番高い』と予測。また、米国人の感染確認から中学生の感染確認まで10日以上あいていることから、米国人と中学生の間に1―2人の感染者が介在したとみている」というのですから、これは世界的大流行(パンデミック)の認定条件になる「地域社会レベルの人から人への持続的感染」そのものです。

 船橋で集団感染した中学生は3〜5日に岩手県に修学旅行に行っており、現地で会食した飲食店の女性従業員にも感染者が出ました。東北では初めて感染例です。滋賀県の男性大学教員が2〜6日に東京都内で開かれたイベントへ出張して感染した例が示すように、首都圏は新型インフルエンザの巣窟になっている可能性があります。なにしろ都の保健所は主に汚染国に渡航していた発熱者しか遺伝子検査をしてこなかったのですから、感染の広がりは全く掴めていません。

 都がどれほど遺伝子検査をしてこなかったか、「東京都インフルエンザ情報」という資料があります。第20号を見ると、渡航者を検査した東京感染症アラート以外には、5月の4〜10日に21検体、11〜17日に31検体、18〜24日に25検体ですから、合計77人分しか調べていないのです。東京都発熱相談センターに寄せられた相談件数は10日には8万件を超えています。第19号を見ると18〜24日には中央区、杉並区、葛飾区でインフルエンザ様疾患で学級閉鎖があったことになっています。上記のわずかな検査数から遺伝子検査をしなかったことは明らかでしょう。この時期に学校で集団発生があっても、東京の保健所には新型を疑って遺伝子検査をするセンスが無いとは呆れてしまいます。これが故意のサボタージュでないのなら、都の役人の頭は空っぽとしか言いようがありません。果敢に検査をした神戸・大阪とは大違いです。実は25〜31日の週にも3区1市で学級閉鎖が起きています。

 東京ディズニーランドが千葉県西部にあるように、船橋は千葉と言うより我々の感覚では東京の一部でしょう。そこで感染源不明の集団発生が確認されても、都には動く構えは見えません。10日更新の「東京都における新型インフルエンザの発生状況」は例によって例の如しです。「6月9日、東京都に報告のあった確定患者は3名です」「これまで報告された確定患者13名全て、新型インフルエンザの蔓延している国又は地域の滞在歴もしくは新型インフルエンザ患者との接触歴が確認されています」では、あざ笑う対象でしかありません。この条件に当てはまらない対象を把握することが「出来ない」システムで運用しているのですから。

【6/14追補】6月11日分までの発症日報告数の推移です。2番目の山が姿を現しました。感染症情報センターのまとめは届け出日ではなく発症日なので数日のタイムラグがあります。

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