団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

新型インフル感染爆発、豪ビクトリア州の失策 [BM時評] (2009/06/24)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 新型インフルエンザで2000人を超える患者を出しているオーストラリアでも、その半数以上はビクトリア州に集中しています。何があったのか、感染症の専門家が州当局を批判している論文を、「科学ニュースあらかると」の《「新型インフルエンザ」の感染拡大にどう対処すべきか?》が紹介しています。5月末に「新型インフル検査、厚労省の非科学と杜撰 [BM時評]」で指摘した、検査すべき人を検査しない構造的な欠陥が豪でもあったのでした。

 「彼らは、ビクトリア州のガイドラインでは現場の医師達に対して、感染が疑われる人達が外国からオーストラリアに戻ってきた場合、もしくはそういった人達との密接な接触が確実に有った人達に限定して、テストを行うように要請していたが、『それは、実際にしなければならなかった事とは正反対だった』、と指摘しています」。加えて検査機関をひとつに限定したので結果が出るのに5日もかかるなどの不手際がありました。

 これはまさに日本の厚生労働省の指針でした。東京の保健所などは目の前にインフルエンザと疑われる患者がいても、渡航歴がなければ無条件で「季節性」として検査もせずに処理してきました。こんな季節に集団発生するのは異常だと、神戸と大阪の医師は指針に逆らって遺伝子検査を要請、新型の集団発生をつかまえたことは周知の通りです。しかし、大部分の都県は指針を守り続け、今になって感染源不明の散発的な患者発生が全国各地で起きています。間もなく1000人に達するでしょうが、実際にどれくらいの患者が隠れているのか、推定する手掛かりは失われました。神戸・大阪の集団発生時よりも大きな2番目の山が出来ています。感染症情報センターのグラフを見てください。


 日経メディカルが「米国ニューヨークで重症化例が急増中」で、押谷仁・東北大微生物学分野教授の国内でも感染拡大の見方を伝えています。

 「@感染源が特定されない例が多数見つかっているA感染していても、症状が軽く本人が気づいていない可能性があるB自宅待機などを避けるため、感染の恐れを自覚していても名乗り出ていない人がいる可能性があるC一部の自治体が新型インフルエンザへの感染を確定するPCR検査を積極的に行っていない――などの理由から、日本でも感染拡大が続いているはずだと訴えた」。Cの「一部の自治体」はもちろん「大部分の自治体」です。岡山県のように人の移動の軸に位置しながら、今日現在でも患者発生ゼロになっている所は「意図的」と申し上げてかまわないと思います。

 押谷教授の報告で「ニューヨークの医師から聞いた」「剖検した5例のいずれも、上気道から下気道まで高度にウイルスが増殖しており、ウイルスの複製量が通常の季節性のインフルエンザより桁はずれに多かったという」「ほとんどの人が新型インフルエンザに対する免疫を持っておらず、基礎疾患がある人や免疫が落ちている人は、ウイルスの増殖を全くコントロールできなくなっている可能性があるのではないか」との部分は、弱毒性といっても決して甘く見てはならないと教えてくれます。

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