団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

第181回「都議選が新型インフル爆発の引き金に?!」 (2009/07/04)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 東京都議選が告示されました。総選挙をにらんだ政局がらみもさることながら、新型インフルエンザ感染爆発の引き金を引くのではないかと危惧しています。国内の感染者は1500人を突破しましたが、報道は極めて地味で、都民の関心は低く、予防などどこ吹く風に見えます。ところが、過去1週間に感染確認された数は愛知の95人に次いで東京が48人にも上り、感染源の存在を示唆しています。国内全体としても「日本の発症別発生動向」が示す通り、神戸・大阪での最初の集団発生をはるかに凌ぐ第2の山が築かれつつあります。「感染のくすぶり」がある上に、無警戒でされる選挙運動と投票での濃厚接触が多数加わればどうなるかです。

 国会議員選挙を衛生関係者が止めるのを無視して強行したアルゼンチンが、感染爆発の制御に失敗し、苦しんでいます。首都ブエノスアイレスでは「首都全域に非常事態=新型インフルでアルゼンチン」が宣言され、学校は冬休みを前倒しにして6日から閉鎖です。選挙を延期できなかった問題はニューヨークタイムズの「Argentines Question Vote During Outbreak 」が詳しく伝えています。「衛生当局者は先週、非常事態宣言をして大衆が集まる選挙を延期、感染の問題に目を向けさせようとした」しかし、政治的理由で強行され、衛生相は辞任してしまいます。

 アルゼンチンの感染者数は公式報告は1500人余りなのに死者が43人もいて、極めてアンバランスです。地元紙LA NACIONの「Ya hay en el pais 100.000 contagiados por la gripe A」は、実は感染が10万人とも5万人とも、と伝えています。死者が百人を超す米国に次ぐ流行ぶりが明らかになったのですが、ニューヨークタイムズによると4000万人の人口に対してタミフルなどの抗ウイルス薬の備蓄が226万人分しかないお寒い事情が背景にあって死者が増えているようです。

 南半球で冬に入るアルゼンチンは、日本とは全く別でしょうか。3日、ロイターは「再送:英国が新型インフル対策見直し、感染者1日10万人も視野」で英国では「新型インフルエンザの感染報告が毎週倍増している」「8月末までに国内の新型インフルエンザ(H1N1型)の新規感染者が1日当たり10万人を超えるペースになると予測」と伝えています。英国はこれまでに7477人の感染を確認しています。

 日本も各地の保健所が、渡航歴がない発熱者は遺伝子検査を避ける「サボタージュ」をしていなければ、人口規模や米国との人的交流の大きさから見て、英国程度に膨れあがっていておかしくありません。同じ北半球にある先進国、英国と大きく事情が違うと考える方が非常識です。日本の「サボタージュ」の結果、初期に捕捉すべき患者が見失われ、そこからの感染経路も見えなくなりました。水際作戦として検疫だけに血道を上げた政府は、大都市圏で蔓延に近い現実を認める訳にもいきません。厚生労働省は「秋からの本格流行に備える」と称して、7月半ばからは集団発生以外は捕捉しない方針を打ち出しました。自分たちの失敗を隠して逃げ切れると考えているようですが、都議選が巻き起こす濃厚接触の大きさを考えてみたこともないとは寂しい限りです。

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