第188回「グーグル検索数からインフル流行予測が稼働」

 グーグルが提供してきた斬新なサービスに「インフル トレンド 」が加わりました。「特定の検索キーワードでの検索数がインフルエンザの流行の指標となることを発見」していました。このデータを提供するサービスを昨年11月、米国から始め、10月初め世界20カ国に対象を広げました。日本も入ったわけです。

 下に引用したグラフは「2009〜2010」と「2008〜2009」を比べる設定です。10月4日の「中規模流行」が10月11日には「大規模流行」にはね上がっています。2番目のグラフは国立感染症研究所感染症情報センターの「新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況−更新17」からの引用で、集計に時間がかかるので9月27日分までしか出ていません。  「インフル トレンドの仕組み」には、過去6年間、米国での特定ワード検索数とインフルエンザ流行がきれいに相関した有り様が示されています。国内はどうでしょうか。2番目のグラフにある折れ線は、全国に5千ある定点観測医療機関のインフルエンザ様患者報告数の平均です。今年1月に流行のピークがあり、昨年末と3月に小さな「こぶ」が出来ています。上の「インフル トレンド グラフ」がかなり的確にこの動向を捉えていて、ちょっとびっくりです。

 逆にトレンド・グラフにある5月前後の山が定点観測グラフにありません。もちろん、この山は新型インフルエンザによるものです。「新型インフル5千人。お寒い都の監視体制 [BM時評]」など一連の新型インフル記事で書いている通り、各地の保健所の多くは新型インフルエンザの確定診断、つまりウイルス遺伝子検査を医療機関が望んでも回避するよう動きました。神戸や大阪のように全国の保健所が動いていれば、実態は違って見えたはずです。

 特定キーワードを持つブログ記事数の推移を見て世論動向をつかむ試みを、夏の総選挙でしています。まとめた結果は「衆院選ブログ観測(4)4年前が政権交代の伏線 [BM時評] 」にあります。ブログを書く行為は全有権者からみて一部の人にすぎませんが、「民主党が単独で3分の2超」との予測報道で自民党側にやや揺れ戻された有権者の動向が反映されました。ブログに比べグーグル検索を利用する人の数は遙かに多いでしょう。患者発生という物理的な動きが、心配などの心理を通して検索数に表現されるとみていいと思います。グーグルは膨大な過去の検索記録を保存しています。「宝の山」からまだまだ色々な発掘がありそうです。