第194回「疑問だらけ――鳩山内閣への危機説・退陣説」

 過去最大額になった新年度予算案の編成が済み、鳩山内閣発足100日で蜜月期間も終わり、メディアの論調はますます辛口に転じています。「Japan Blogs Net」の巡回でも鳩山内閣批判や見切り説が露骨になり、早期退陣を予想するメディアすらあります。サイトやブログにお客を引きつけるにはよいのでしょうが、私には皆さん集団ヒステリー状態で冷静に事態を見る目を失っているように見えます。

 まず、内閣支持率が早くも50%前後にまで低下したことを重大視する方たちがいます。この数年、自民党内閣の支持率が発足からつるべ落としのように下がって、政権投げ出しにつながってきた事実が頭にあるのでしょう。よく思い出してください。支持率低下が次の国政選挙で敗れることに直結していたから起きていたことです。22日にリリースした「女性の支持層形成で民主盤石〜朝日新聞分析」から小沢代表時代(昨年9月から今年4月)と鳩山代表に代わった5月から、さらに鳩山政権になってからの3時期でみた民主党と自民党の平均支持率データを再録しましょう。  小沢代表時代から自民党は男性では民主党に後れを取り、鳩山代表になって女性でも押されるようになりました。だから内閣支持率低落は致命的だったのです。しかし、鳩山政権下での民主党と自民党の支持率の差はこんなに何倍も開いてしまっています。政党支持率と比例区での投票行動は強く相関していますから、全国区がある来夏の参院選で民主党が敗れる可能性は極めて小さくなっています。内閣支持率に一喜一憂する必要はありません。

 過去最大になった予算案について、財政規律を持ち出して落第としたり、埋蔵金10兆円の活用を問題視して「次年度への展望がない」と批判するのも、政権発足後すぐに予算編成に突入せざるを得なかった事情を無視していると思います。自公連立政権下と同じ方式で予算編成をすれば合格点だというのなら、政権交代の必要は無いし、議論する必要もないことになります。また、景気の二番底が心配される現状では死蔵してきた埋蔵金を最大限生かすこと自体に問題はないはずです。事業仕分け論議で明らかになったように、国家運営の上で何が無駄で、何を重視するのかの原理原則が薄弱ではあります。早急に手をつけるべきはこれでしょう。

 沖縄・普天間基地移設問題でも年内に決着しなかったことを問題視する意図を持ったメディアの世論調査がされています。「年内に決めなかったことを評価するか」といった聞き方を電話でして好意的な反応が返って来る方がおかしいと思います。「しなかった」事実が評価されるには相当の背景理解が必要だからです。この問題の一からの見直しをするつもりなのですから、本来は時期を小出しにするのではなく「最低でも半年は必要」と言って調査と調整を始めるべきでした。

 閣僚が色々な発言をして「閣内不一致」と騒がれた点について「Japan Blogs Net」で集めているブログ中で「かみぽこ政治学」「日米関係:米国とは揉めてるくらいがちょうどいい(前編)。」は他とは違う見方をしています。「マスコミはこれまでの『政治家の発言は結論』という固定観念を少しは捨ててみる必要があるんじゃないかな」「ちなみに、この鳩山内閣のような政治家による百家争鳴のやりとりは、英国の内閣では日常的に当たり前のことなんだよね」「英国のマスコミは、それをいちいち『閣内不一致』『不規則発言』などと騒ぐことはない。閣僚が調整の過程で意見をぶつけ合うのは当たり前のことだからね」

 そして、「後編」では「日本側からみると『普天間基地移設問題』で米国と揉めていることはそう悪いことでもないということになる」「米国に従順な姿勢を守り、言われるままにいろんな援助をしていたら、米国は日本を無視して対中関係に集中するだろうね」「それよりも、揉め事を起こして、それを解決しようとする時に、いろんな果実を得られるチャンスが生まれてくるだろう。米国は、とにかく早く日本との揉め事をなくしたいんだからね」と一歩引いて、日米中の三角関係で考えるよう求めています。

 鳩山内閣を無条件で擁護する気はありませんが、退陣すべきだとか要求するような客観情勢ではないことは理解していただけるのではありませんか。