第201回「マグロに続きウナギも完全養殖の国産技術」 (2010/04/10)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 暗いニュースが多い中で水産総合研究センターの「世界初の『ウナギの完全養殖』、ついに成功!〜天然資源に依存しないウナギの生産に道を開く〜」といったサクセスストーリーに接すると、ほっとします。前に書いた「国際規制強化に間に合ったマグロ完全養殖」と合わせて、海外に比べて圧倒的な差をつけている国産の養殖技術です。

 「完全養殖が実現しても、国内のウナギ養殖に必要な億単位の種苗を生産する技術は確立されていないので、今すぐに養殖用種苗を人工生産によってまかなえるということにはならないが、この成果は、資源の減少が危惧されている天然ウナギに依存せずに飼育下でウナギを再生産できることが示されたという点、および飼育環境に適応したウナギを選抜して世代を重ねることによって安定的大量生産技術開発に向けての進歩が期待できるという点で大きな意義を持っている」

 国際的にマグロ資源の心配が言われていますが、ウナギ資源の方がもっと深刻かも知れません。農水省の「ウナギ人工種苗の実用化を目指して」にあるグラフと解説を引用(国や自治体の資料は引用元を明記すれば転載は自由)してみます。「世界的に見ても各種ウナギの資源水準が低下していると言われています(図3)。一方、中国のウナギ養殖ではヨーロッパウナギも種苗として利用されていますが、資源の枯渇を懸念して2007年のワシントン条約締約国会議において、ヨーロッパウナギの国際的な取引が規制されることになりました」。日本より欧米ウナギの枯渇が大変で禁輸の動きもあります。ヨーロッパウナギはニホンウナギよりも大ぶりです。


 人口生産の稚魚から育てたウナギを成熟させ、これから稚魚を得て完全養殖のサイクルが出来たのですが、実用化への道のりはまだ長いとも言えます。と言うのもウナギの稚魚は人工環境では、なかなか大きくならないからです。平たく言えば何がエサなのか、まだ判然としないのです。「(4)ウナギ仔魚の正常な育成のための飼料の開発と飼育環境」はこう説いています。稚魚「ウナギレプトケファルスはゼラチン質プランクトンなどを起源とするマリンスノーを主に食べているという説が有力ですが、その構成要素や栄養成分の特定には至っていません。最近始められた消化管内容物のDNA解析によるアプローチでは、これまでに真菌、珪藻、クラゲ類などのDNA配列がわずかに得られていますが、餌生物を特定するにはさらなる研究が必要です」

 親ウナギはグアム島の西側に当たる海域の深海で産卵、誕生した稚魚は少し大きくなってから黒潮に乗り、「白いダイヤ」とも呼ばれるシラスウナギとして日本列島にやって来ます。この回遊状況が解明されたのも最近のことです。特定の深海で育つので、そこの環境条件がウナギには大事なのでしょう。本当はその現場を見に行きたいところですが、人間には簡単ではありません。

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