鳩山退陣表明への経緯は『藪の中』そのもの [BM時評] (2010/06/02)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 鳩山首相の「突然」の退陣表明をめぐる報道は錯綜していて、『藪の中』そのものの様相です。もう少し情報が出るのを待つべきでしょうが、2日夜の段階で目を引いたのが時事通信の「『解任動議通る』小沢氏が引導=自信の親指立てで情勢一変−首相退陣の舞台裏」と、47Newsの「首相、記者団とのやりとり全文」です。両者は全く反対の「事実」を告げています。

 「『解任動議通る』小沢氏が引導=自信の親指立てで情勢一変−首相退陣の舞台裏」のストーリーはこうです。「1日夜の段階では、首相が逃げ切るかに見えた。一夜にして情勢を一変させたのは、首相の不用意なしぐさだった」「首相の姿をとらえた映像は1日夜、幾度となくテレビで流れ、首相秘書官の1人は『辞める気がないということだ。ちゃめっ気だ』と解説した。しかし党内の受け止めは冷ややかだった。『自分の進退問題なのだから神妙にするものだ。首相のやることじゃない』。首相続投もやむを得ないと、比較的冷静だった衆院側にも怒りと反発の声が広がり、首相の運命は暗転した」「『両院議員総会で代表解任動議を出せば通ってしまうよ』。小沢氏が電話でこう言って辞任の決断を促すと、首相は『分かりました』と答えるしかなかった。この電話会談は2日早朝にあったとみられる」

 テレビがしつこく流した謎の「親指立て」が参院選でやっきの参院議員ばかりか、衆院議員まで敵に回したと解説しています。鳩山首相の自発性はゼロです。

 「首相、記者団とのやりとり全文」には全く違う経緯が出てきます。《月曜日には私の方から身を引きたい、辞したいということを申し上げました。そしてその翌日(輿石東参院議員会長を含む)3人でお会いしたときに「私も辞めますが、一番求められているのは政治に対する『政治とカネ』におけるクリーンさだ」「クリーンな民主党に戻さなくてはいけない。そのために幹事長にも身を引いていただきたい」ということは申し上げた。「分かった」ということでありました》とあって、事態は鳩山首相主導で進んだ事になっています。

 さらにこんな不思議な表明もあります。「私は自分が身を引くことが結果として国益につながると判断しました。そんなに遠い話ではありませんが、10日から1週間くらい前からそのことを自問自答しておりました」というのです。この心理状態なのに、沖縄・普天間基地問題を辺野古周辺移設の閣議決定として決着させ、社民党を連立から追い出したとは、夢遊病者のようです。

 何が真実かまだ分かりませんが、この間のメディア報道を見ていると、官房長官を指しているとしか読めない文脈で思い違い甚だしい発言が連発されています。端的な例は、社民党を切ることが国家安全保障で高い評価につながると思ったのに――などです。『藪の中』の可笑しさに、平野官房長官の政治感覚の錯誤が絡んでいるように感じられます。鳩山政権が短命に終わった要因の一つは、愚かな官房長官選びにあったと思います。

 【関連】第204回「ここまで戦略性無しで首相を続けるのは無理」

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