第209回「10月完工は厳しさ増す六ヶ所再処理工場」 (2010/07/04)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 昨年の6月に第180回「敗因は何と工学知らず:六ヶ所再処理工場」で「完成は絶望的」と指摘した青森・六ヶ所村の核燃料再処理工場ガラス溶融炉で、天井から落下したレンガが2カ月半かけて取り除かれ(当初予定は10日間)、溜まっていたガラス溶液の抜き取りが2日に終わったそうです。1年余りかけて原状復帰状態になりました。8回目の延期をした完工目標は10月ですが、計画より既に6カ月遅れともいいます。

 2兆2000億円の巨費を投じた再処理工場が稼働するかどうかは、高レベル放射性廃液のガラス固化が成功するかどうかで決まります。今回、改めて日本原燃の技術レベルを検証するために「定例記者懇談会挨拶概要」を読み、対応する技術レポートを経済産業省サイトなどで探しました。社長の話だけ読んでいると、事態は改善の方向に進んでいるかに見えます。

 6月29日には白金族の炉底部沈降=ガラス流下阻害という、完工を遅らせている一番の不具合について述べています。東海村にある実規模試験装置「KMOCを使った試験につきましては、今月9日から前回起こった流下不調の時に近い炉内の温度状態を再現する試験を先週末まで実施いたしました」「この結果、予想どおり、ガラス温度が高くなると白金族が炉底部に沈降するという、流下不調の時と同じような状態変化が起こることを確認いたしました」「白金族の挙動への対応、つまり、温度管理がいかに大切であるかということと、KMOCに追加設置した温度計の有効性を実感した次第であります」

 実規模試験装置で新知見が得られて、これで完工見通しが立ったかのようです。ところが「ガラス固化設備の開発、試験等の経緯」の6ページ「KMOC#6(1)(H16.3〜5)」の項に「(ハード改造)・ 炉底ガラス温度計設置【KMOC】」とあり、「KMOC#6(2)(H16.7〜11)」に「炉底ガラス温度計設置【実機】」ですから、温度計設置は6年前です。温度管理の重要性は試運転で失敗する前から分かっていたことです。また、実機の試運転で失敗した条件を試験装置では試していなかったように読めますから、ずさんな準備態勢であることは間違いありません。

 このレポートの冒頭では、原研機構で開発された実験炉(ガラス量880kg)を、六ヶ所の実機ではガラス量4800kgと強引に大拡張した事情も説明されています。「ガラス溶融炉の処理能力は溶融表面積に依存し、ほぼ比例の関係にある」と「開発の過程で確認」したので拡張し、ガラスもカートリッジタイプからコストが安いビーズ状に変えたとしています。エンジニアリングの常識では「確認」ではなく「推定」したのであり「別途確認する試験を実施」すべきなのです。最終試運転と並行して、いま確認試験がされているかのよう。

 天井のレンガが落ちたのは想定外の運転中断が相次ぎ、温度変動が大きくなって割れてしまったと国に報告しています。今後は温度変動を抑えるし、落ちても安全には影響しないとの建前をとっています。しかし、落下レンガ片がガラス流下ノズルに入るような小さなものなら、運転の安定性は損なわれます。社長自身が「当初、白金族の堆積やレンガの破片等による詰まりによって流下や通電が上手くいかない心配もありましたが」と言っているとおりです。

 高レベル放射性廃液漏れなどで悲惨な状態だった現場が、1年以上費やしてきれいになっただけ。本質的な打開策が出来たのかと問えば「ノー」でしょう。

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