低燃費車移行の緩慢さに救われGMが黒字化 [BM時評]

 米GMが法的整理から脱して1年になります。朝日新聞が11日「『新生GM』再起1年、再上場間近 商品競争力に課題」で「今年1〜3月期の純損益は8億6500万ドル(約760億円)の黒字。経営破綻(はたん)前の「旧GM」を含めると、黒字は2007年4〜6月期以来約3年ぶり」と伝えました。再上場が出来れば、米国とカナダ政府が7割以上を持つGM株を売却して、公的管理から抜け出せます。

 再建が危ぶまれた1年前を振り返ると、意外とも言える経営改善ぶりです。「時事ドットコム」の「【図解・自動車産業】米新車販売台数の推移」を見て、米国消費者の低燃費車移行がまだまだ緩慢なのを知りました。これにGMは救われているのです。このページに掲載されている6月の新車販売状況を見ましょう。

◇2010年6月の米新車販売台数
  (米オートデータ調べ。単位台。カッコ内は前年同月比増減率)  乗用車よりガソリンがぶ飲みタイプである小型トラックが、乗用車以上に売れているからGM、フォードは息がつけるのですね。

 しかし、米国政府は新車の燃費規制を2012年型から強化、2016年型ではガソリン1リットル当たり14kmにまで高めることにしました。「アメリカの新車燃費規制(アメリカの自動車戦略 前編)」(日比野庵 本館)は「3L、5Lといった高排気量の車種となると、この基準を満たすのはガソリン車のままでは難しい」「たとえばレクサスの3.5LカーであるGS350の燃費はカタログスペックでは、9.6(km/L)。これが、ハイブリッドの450hとなると、同じ3.5Lでも14.2(km/L)に跳ね上がる。日本車であっても、大排気量となるとガソリン車のままでは、この燃費規制をクリアすることは難しい」「従って、遅かれ早かれ、全てのガソリン車はハイブリッドに移行すると予想される」と見立てています。

 朝日新聞の記事は最後で「ハイブリッド車ではトヨタ自動車や米フォード・モーターに後れをとり、GMが次世代技術の本命として投資し続けてきた燃料電池車は市販のめどが立っていない。米オバマ政権が『日系メーカーに1世代遅れた』と指摘した『経営難の時代』のツケは簡単に一掃できない」と指摘します。GMの「再建」が間に合うのか、予断を許しません。

 【参照】第178回「GM破綻、連邦破産法11条でも再生険しく」