第214回「岡崎図書館事件を朝日新聞が独自取材で追及」

 6月の第207回「岡崎図書館事件を知るとIT立国など到底無理」で「これで事件だと騒ぐ警察と、冤罪を疑おうとしないマスメディアで固められていては」と断罪した『事件』の罪滅ぼしを、朝日新聞名古屋本社の神田大介記者が「図書館HP閲覧不能、サイバー攻撃の容疑者逮捕、だが…」でやってくれました。名古屋は朝刊、東京・大阪は夕刊に入るようです。

 「朝日新聞が依頼した専門家の解析によると、図書館ソフトに不具合があり、大量アクセスによる攻撃を受けたように見えていたことが分かった。同じソフトを使う全国6カ所の図書館でも同様の障害が起きていたことも判明。ソフト開発会社は全国約30の図書館で改修を始めた」「岡崎市立図書館は『様々なプログラムによるアクセスにも対応するよう改善を進めたい』と説明。愛知県警は一連の不具合を把握していなかったが、『図書館の業務に支障が出たことは事実で、捜査に問題はない』としている」

 一般紙の紙面でこの話を取り上げるとなると、予備知識がない、広範囲の読者に分からせる必要があります。表現方法など随分、苦労しているのが見えます。大繁盛のこの件のTwitterでも神田記者本人が説明しています。ただ最後の部分「捜査に問題はない」だけはいただけない釈明です。問答無用で逮捕して20日間も拘留したのが問題で、警察である以上、捜査することには何の問題もありません。

 警察・司法に自浄能力が無い以上、せめてマスメディアがきちんとエネルギーを使って取材し社会的な間違いを正さなくてはなりません。「商業新聞」と言うと響きが悪く感じられる方もいるでしょうが、内部にいる側は多数の読者からの購読料=付託に応えるべく活動する理念を持っています。古い言葉を使うと「読者への忠誠心」です。「第四の権力」などあろうはずもありませんが、数百万人から付託されているのは事実です。

 この事件についてはその後、高木浩光氏が色々とフォローされていて「国会図書館の施策で全国の公共機関のWebサイトが消滅する 岡崎図書館事件(5)」などを見ていると、図書館関係者の技術レベルがあまりにお寒いと知れます。検索用にデータを集めに来るロボット向け「robots.txt」の書き方が稚拙にすぎて深刻な副作用が出るといいます。当然ながらメンテナンスを担当しているシステム業者の知識レベルも疑われます。6月に書いたことを再収録しましょう。「司法、マスコミを含めた社会全体のデジタルデバイドは深刻で、これじゃIT立国など到底無理です」