第216回「2年延期でも完成は無理?六ケ所再処理工場」 (2010/09/02)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 2兆2000億円を投じながら完成が13年遅れている青森の六ケ所核燃料再処理工場について、さらに2年の延期をする見通しとマスコミが一斉に報じました。朝日新聞の「六ケ所・核燃再処理工場、完成2年延期へ 原燃方針」は「処理過程で出る高レベル放射性廃棄物をガラスに閉じこめる『固化試験』でトラブルが続出。このため、炉の温度を細かく調整するための大幅な改修が必要と判断」としています。しかし、この延期で完成が保証されるのか、極めて疑わしいのです。

 朝日新聞青森版の「原燃 試運転終了を2年延期へ」は「原燃は、溶融炉内の温度管理のノウハウをさらに高めるとして、模擬廃液を使った試験でデータを蓄える方針。県幹部は『れんが落下は、放射性廃液をいきなり使って試験をしたため起きたのではないか。模擬廃液での検証に長期間かけ、工場完成につながる試運転には当面入るべきではない』と指摘した」とも伝えています。日本原燃の技術レベルの悲惨さがあらわになって、行政側も不信感を高めています。

 昨年の第180回「敗因は何と工学知らず:六ケ所再処理工場」で高レベル放射性廃液のガラス溶融炉に「実証されていない新方式を採用した時点で、工学とはかけ離れた『ロマンの世界』に移ってしまいました。ブレークスルーすべき要素技術があるなら、実プラントの建設ではなく、まず研究室で実証すべきです」と指摘したように、実用技術として確立していない方式を大型の実機に採用した点に根本的な問題があるのです。

 最近になって、東海村にある実規模試験装置で細かな温度管理をすればうまく動作する場合があると知れたようです。その細かな温度管理のために大幅な改修をしようというのですが、プラントの現場は既に高レベル放射性廃液で汚染され、人間が立ち入れない「死の空間」になってしまいました。大幅改修を遠隔操作でしなければなりません。これまでの試運転でのドタバタぶりを見れば、改修が成功し、安定した運転が続けられる可能性は低いと思えます。昨年、津島衆院議員が「なぜ国産技術にこだわるのか。自信がなかったら外国の技術を取り入れるべきだ」と主張しました。2年も延期するなら運転実績がある方式を新規に導入するべきです。

 高速増殖炉「もんじゅ」での炉心装置落下事故への対処が行き詰まっている問題といい、国策原子力開発には技術的な常識を持つ人材が欠けていると断ぜざるを得ません。巨費を投じているのですから、民間なら失敗を許されないケースです。

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