第223回「米国住宅ローン問題の病根深く景気は戻らず」 (2010/10/15)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 リーマンブラザーズ破綻などの米国発、世界金融危機を引き起こした住宅サブプライムローン証券化がまた亡霊のように蘇って米国経済の首を絞めているようです。今日の日経新聞「差し押さえ住宅 米金融、売却停止広がる」での「物件の競売に際し、書類に不備のあった事例が多いとの疑いが浮上」とは単純な手違いではなく、ローン証券化とその世界規模販売による副作用で、問題物件の所有権者が判然としなくなった事態を指します。

 先週末に米銀行大手バンク・オブ・アメリカが全米で差し押さえ住宅の転売を一時やめると発表し、12日には米金融サービス会社アリー・ファイナンシャルも全米で住宅競売を一時停止しました。「全米50州の司法長官、住宅差し押さえで共同捜査着手−金融機関対象」(ブルームバーグ)は「銀行やローン回収業者が不適切な書類や署名を用いて数十万件にも上る差し押さえを正当化しなかったか、共同で捜査に乗り出す」としています。

 「Market Hack(外国株ひろば Version 2.0)」の「ロボ・サイナー問題とは何か? アメリカの不動産市場、オワタ」がこの間の事情を説明してくれます。

 「マイホームのオーナーが住宅ローンが払えなくなり、住んでいる家を銀行が差し押さえするとき、銀行の担当者が『この物件の所有権はまちがいなくわが銀行にある』という宣誓書(affidavit)に無造作にサインする」「『アンタ、これ本当にアンタの銀行の所有だって、証明できるの』そう異議を唱えたのは不動産名義保険会社(タイトル・インシュアランス・カンパニー)です」不動産登記システムが信頼できない米国で「タイトル・インシュアランス・カンパニーは誰から誰へと所有権が変わってゆく物件の歴史をしっかり追跡、記録しています。言わば『私設不動産登記所』みたいなイメージです」

 「アメリカで庶民がマイホームを購入するとき住宅ローンを銀行から借ります。銀行は殆どの場合、そのローンを第三者に転売します」「転売されたローンをひとまとめにして(証券化)さらに取引するということが行われてきました」「JPモルガンやバンク・オブ・アメリカの担当者が差し押さえを実行するにあたり『もちろん、この物件はオレのものだよ』という宣誓書にサインしたのに対し、タイトル・インシュアランス・カンパニーは『アンタ、この権利はバラバラにされて、転々と転売されてきたのに、これが本当にアンタのものだと、本当に調べたの?』と言っているわけです」「でもこれを調べ始めたらいままで輪切りにされ、転売された証券化商品の歴史をぜんぶ遡らないといけないわけで、『ヒト・ゲノムの解読作業』みたいな膨大な作業が待っているわけです」

 こう説明してもらえると事態の深刻さ、病根の深さが見えます。差し押さえ住宅の競売すらままにならない状況が続けば、住宅市場の回復などありません。景気回復が見通せなくなっているためにドル安は続くでしょう。米国で住宅価格が上がり続け、庶民は値上がり分を消費に振り向けて消費ブームを謳歌していた「昨日」が嘘のようです。

 「米国 住宅差し押さえ状況」(記録)が拾っているブルームバーグからの数字は興味深いと思います。9月に「デフォルトや競売の通告を含む差し押さえ手続き開始件数は前月比3%増の34万7420件で、これは全米で371世帯に1世帯の割合で通知を受けた計算になる」、「手続きの不備を受けた住宅差し押さえの遅れは米金融機関にとって1カ月当たり20億ドル(約1600億円)のコスト」などです。いずれも1カ月の数字なのです。

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