第225回「韓国核融合記事で改めて気付く日本勢の独善」 (2010/10/24)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 先週、朝鮮日報が「韓国の人工太陽『KSTAR』、核融合に成功(上)核融合研、2000万度で6秒間プラズマを維持」と報じたのを見て、20年以上前に核融合を取材していた頃にタイムスリップした感じで目眩がしました。何億度到達が問われている現在、ニュースは超電導コイルを使った点だけですが、核融合による高速中性子を検出したと胸を張っていらっしゃいます。これを機に久しぶりに日本の核融合「業界」をサーベイしてみると、こちらも我田引水の独善ぶりでくらくらする思いでした。

 核融合研究は大型化にするにしたがってお金が掛かりすぎるようになり、各国ばらばらではたまらないのでフランスに建設する「国際熱核融合実験炉(ITER)」計画(1兆6000億円)に一本化されたはずでした。そこで超電導コイルが使われるので、韓国はその走りになります。サムスンの当該部門がそっくり移行して製作したそうで、やる気は買いましょう。しかし、微量の核融合中性子線が検出されたと騒いでいるのはあまりに時代遅れです。今や実験装置ながら膨大に出る中性子線による周辺物質の放射化が問題になっており「ITERや核融合炉の放射能は?」が「ITERでは、約20年間の運転終了後には約3万トンの放射化物があるとの試算がなされています。 100年後にはその放射能は、50万分の一になります」と説明しているほどです。

 実験装置でこれですから、定常運転する核融合発電炉と周辺の放射化には空恐ろしいものがありますが、低放射化材料がそのうち開発されるだろうとして発電装置を備えた原型炉への道筋が「核融合開発ロードマップと今後の原型炉開発への展望」(2009)で描かれています。核融合反応を最も低いプラズマ温度で起こせるのは重水素と三重水素(トリチウム)の組み合わせです。ITERは2020年代にこの反応を初めて本格的に使い、DT燃焼で大量の中性子を生んで熱に変え、発電につなげます。日本の原型炉はITER実験が全てうまく進む前提に立って設計を前倒しし、DT燃焼実験が終わる2020年代末には建設に入る性急さです。

 また、かつての「旗艦」実験装置JT60は役目を終わったはずでしたが、「JT60SA」としてもう一度建設される話になっています。SAは「super, advanced」の略で、こちらも超電導コイルを使い、ITERの相似形装置として運転条件の模擬に役立てるとか。運用は国際協力の枠内ですが、建設と実験は「国内のトカマク重点化装置としての費用は別枠で必要」といいますから、呆れてしまいます。国際的にITERに一本化したはずなのに、巨額を要するミニチュアを欲しがっているのです。「原子力政策大綱等に示している核融合研究開発に関する取組の基本的考え方の評価に関する報告書(案)に対する御意見」(原子力委員会)の冒頭で「JT60SA に期待するが、核融合エネルギー開発への貢献が見えにくい」と言われて当然です。

 昔から予算の分捕りには強い研究者が集まった日本の核融合「業界」で、独りよがり、独善は後発の韓国以上のものがあります。しかし、説明責任が果たせない巨大科学プロジェクトに大きな予算が付く時代は去ったと気付くべきです。

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