第231回「岡崎図書館事件、半年経過しシステム欠陥謝罪」 (2010/12/01)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 第207回「岡崎図書館事件を知るとIT立国など到底無理」で取り上げた38歳の会社社長が岡崎市立中央図書館のホームページに大量アクセスを繰り返しシステムを止めたとして、偽計業務妨害容疑で愛知県警に逮捕されたのが5月でした。昨11月30日、このシステムを作った三菱電機インフォメーションシステムズが半年も経過してシステムに欠陥があったと認めました。《三菱電機ISが図書館システム問題で謝罪、「SIerとして不十分な点があった」》(INTERNET Watch)などが伝えました。

 会見では「1回のアクセスに対して10分間データベースとの接続を維持する仕様となっていたため、頻度の高い機械的アクセスによってデータベースの同時接続数が設定値を超えたためアクセス障害が発生した」と説明されました。せいぜい数十秒で終わる図書検索なのに10分間も引っ張り続ける仕様だったために、1秒間に1回、新着図書の有無を見に行く会社社長のコンピュータからのアクセスがあると、同時に処理する件数が膨大になってしまう欠陥です。検索結果を返したら接続を切る――普通の処理にするだけで問題解決でした。

 全く突然に逮捕され20日間も拘留の上に不起訴(起訴猶予)になったご本人が長大な「Librahackメモ」に、自身の経験とこの間、色々な人が真相究明のために集めたデータを時系列で並べていらっしゃいます。「6/10 検察庁で検察の取り調べを受けた」の項にある会話がシステム欠陥との関係、日本の検察のITレベルを示しています。

 《検察官との会話1:本人「あの(方式の)アクセスでサーバがエラーを発生するとは(普通)思いませんよ?」 検察官「でもプロなんだからそれぐらい気付かないの?」 本人「いやいや(予想できません)。リクエストに対するレスポンスが返ってきてから次のリクエストを送信するのでサーバにかける負荷は高々1リクエスト分です。だから自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するはずはないと考えますよ、普通。」 検察官「でも君が何回もアクセスしたから問題が起きたわけでしょ。」 本人「それは図書館のサーバの不具合が原因ですよ。」 検察官「・・・」 検察官「でも他の利用者はそんなことする(プログラムを使ったアクセス)と思う?」》

 検察官がここまで説明されて理解できなかったとは、地検廻りを経験し頭脳明晰な検事を知っている者として意外です。会社社長の「リクエストに対するレスポンスが返ってきてから次のリクエストを送信する」説明が理解できれば、全く別のファクターが裏側に潜んでいると推論して当然なのです。理系出身か文系出身かの問題ではなく、純粋にロジックの問題です。そして、早期の真相究明を阻んだのが「システムに問題は無い」と言い張り続けた三菱電機ISと、その言い分に乗って頑なだった図書館側の姿勢でした。

 この件で大活躍された高木浩光さんが「三菱電機ISに求められているものは何か 岡崎図書館事件(10)」の最後に、10月下旬に同社を訪れて常務を相手に非常に厳しい通告をされたことが書かれています。「三菱電機ISは情報システムの会社だ。現時点でなくとも将来、Webクローラを用いたシステムを開発し運用することだってあるだろう。そのような当事者でありながら、このような対応を続けるのか。情報システムの関係者全体に迷惑がかかることが未だわからないのなら、業界から退場してほしい」

 6月には「司法、マスコミを含めた社会全体のデジタルデバイドは深刻で、これじゃIT立国など到底無理」と書きましたが、あの時点ではシステム製作側までもがこんなに鈍とは思っていませんでした。これではグーグルに対抗するような、国際的な競争力があるモノやシステムを生み出すなんて根本から無理です。天を仰いで嘆息するばかりです。

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