もんじゅ落下事故に甘い認識、文科省の死角 [BM時評] (2010/12/18)

(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 高速増殖炉もんじゅ(福井・敦賀)は落下した炉内中継装置を引き上げるために出力40%の試験運転日程を半年延期すると発表したのですが、47NEWSの《副大臣「大きな事故ではない」 もんじゅ装置落下で》が「笹木竜三文部科学副大臣は17日、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で職員らに訓示し、8月に起きた燃料交換用装置の落下事故について『安全上、大きなトラブルではない』と述べた」と伝え、監督官庁である文科省の甘い認識が露呈されました。炉内中継装置を抜きとる大がかりな工事が無事に終わっても、落下事故によって炉心内に出来た損傷が冷却材ナトリウム液の中で確認できるかどうかすら不明です。

 日本原子力研究開発機構が16日に発表した引抜き工程は次の図です。



 取り出し口の燃料出入孔スリーブの上には高さ7メートルにわたって各種機材が積み上がっていますから、まずそれを撤去します。そこに4階建てのビルほど高さがある簡易キャスクを設定し、アルゴンガスを満たして原子炉内と同じ状態にした上で、変形して抜けない炉内中継装置と燃料出入孔スリーブを一体で引き上げるというものです。炉内中継装置に付着している冷却材ナトリウムが空気と激しく反応して燃えるため、簡易キャスクに収容してから後の処理もナーバスになります。

 この図で注目点はナトリウム液位です。引き上げ作業の失敗で空気が炉内に入ることを心配して、ナトリウム液位をぎりぎりまで下げるはずです。その状態で炉内中継装置が落下してぶつかった場所は液中に隠れています。金属ナトリウム液は不透明ですから、引き上げが成功しても第215回「もんじゅの炉心用装置落下、死んだも同然に」 での「破損を見つけられない」指摘はそのまま有効です。

 もともと今回の落下事故は核燃料交換という、原子炉管理では初歩的な作業で起きました。「超々楽観主義!! もんじゅの事故トラブル想定」で検証したように、炉内に物が落ちる想定が全くされていません。文科省は想定になかったから『大きなトラブルではない』と思っているのですから、技術的にはもう笑い話の世界です。これまで全く経験がない引き上げ作業が本当に無事済むのか、過去の失敗の数々からも疑わしいと思います。

 ただ、これが成功すれば本格運転はそのままで出来なくとも、廃炉にする事は可能になるはずです。動かなくても年間200億円以上を食いつぶす怪物を早く廃止したいものです。ブログでも廃止待望の声は数多く聞けます。

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