TV録画やブルーレイ、何でも3D視聴してみたら [AV特集]

 昨年の映画「アバター」や「タイタンの戦い」などで火がつき掛けた家庭の3D鑑賞ですが、現在は停滞気味です。3Dソフトが売り出されず、見るべき映像素材に乏しい点が決定的です。この春、デスクトップPCを新調した機会に3D化し、原発事故騒ぎが気になって遠出も出来ず、空いた時間に触っているうちに現状でも工夫すれば家庭のAVソースはすべて3D視聴できることに気付きました。映像鑑賞のグレードが大きく上がると感じたので報告します。

 使っているツールはパソコンでは一般的なNVIDIAの3Dメガネと、ブルーレイドライブに付属してきた視聴ソフト「PowerDVD10」、それにBENQのXL2410Tディスプレイです。このソフトはDVDや動画ファイルを3D化する機能を持っていますが、ブルーレイソフトは3Dに出来ません。実は年内にはそれも可能になると聞いて早めに3D化したものの、物足りなくなって調べてみました。「Passkey for ブルーレイ」を導入すれば、ブルーレイソフトばかりか、デジタルレコーダからブルーレイにダビングしたハイビジョンTV録画まで3Dに出来ます。有料ながら1カ月の無料お試し期間があります。

 Passkeyはドライブに入っているブルーレイディスクに手を加えず、読み出す途中でデータ変換してしまう機能を持っています。普通ならPowerDVDからブルーレイは正面玄関からしか開けず、奥にあるファイルを直接は開けない制限があるのを解除してくれます。「BDAV」フォルダの下にある「STREAM」の中に映像ファイルがあり、たいていは最大のものが本編です。TV録画なら1番組1ファイルなのでさらに簡単です。該当ファイルを開くだけならば著作権法上の問題は発生しません。

 映画・アニメでは名作「2001年宇宙の旅」「エイリアン」ブルーレイをはじめとしたSF、通常DVDながら「ロード・オブ・ザ・リング」などのファンタジー、3D映画が大ヒット中の『攻殻機動隊』WOWOWハイビジョン放映版、スタジオジブリのアニメなど、どれも一皮むけた映像美になります。モノクロでも黒澤作品の傑作「七人の侍」での野武士との戦闘シーンは、奥行き方向に人物を多数展開する演出なので効果があります。インディ・ジョーンズなどの活劇も当然ながら楽しくなります。

 ライブものではゴージャスなショー映像を見せる歌姫ビヨンセ、ステージ背景の大スクリーン像まで3D化されるのはやや意外。クラシックの三大テノールに派手な動きはないながら、歌う表情が濃くなり実在感が格段に上がります。このほか花火大会のハイビジョンをいくつか持っていて、円盤状に開く花火などに2Dで見えなかった方向感が現れ、重なり具合が表現されるので新鮮です。

 自然映像では空撮ものも距離感が出て良いのですが、水のボリューム感がリアルに表現されるのに最も驚かされます。巨大な瀑布は見飽きませんし、流体として動く波とイルカ、海鳥など動物の絡みといったシーンは特筆ものです。鳥や虫など小動物がとてもチャーミングになります。食虫植物の触手多数が捕まえた虫を包み込むのが立体的に見えるのには興奮させられました。

 止まっている対象で効果を感じた最たるものは仏像で、のっぺり映像とは異次元の存在感が備わります。興福寺の阿修羅像や新薬師寺の十二神将像など、感情移入のレベルが上がります。ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた深宇宙での様々なガス星雲像も3Dで見る価値があります。季節のサクラでは木々の重なりに距離感が加わるので、べったり桜色一色ではなく重なりながら分離して見えます。

 本物の3Dブルーレイソフトはまだまだ少なく、私の所有はパナソニックからレコーダ購入サービスで貰った「アバター」など3本だけで市販品はありません。オリジナルと3D化したブルーレイと比べると、立体感の細部や切れ味、例えば人物の前で浮遊物が舞っている点の有無などが違いますが、言うほど大きな差ではありません。今回報告したハイビジョンレベルの3D化はバラエティ豊かですし、十分、楽しめるように思えます。

 「THE世界遺産3D GRAND TOUR」などサイド・バイ・サイド方式での3Dテレビ番組も始まっていて、これを録画、ダビングしてパソコンで見るためにもPasskeyの制限解除が欠かせません。ただ、NVIDIAの3Dメガネがきちんと動き出すまでに1週間ほど手こずりましたし、サイド・バイ・サイド方式録画を一度見るまで妙に画面が暗かったりと試行錯誤させられました。ジブリのようにDVD映像がざらざらしていても3Dにしたら見るに耐えるくらいに精細感が上がるメリットもあります。左右二つの映像を、頭の中で立体像にする際に補完するようです。通常DVD映像を画素数で5倍以上あるフルハイビジョン画面に引き延ばしては粗すぎるので、もう止めようと思っています。