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第268回「福島原発廃炉プランに見る楽観的過ぎる前提」 (2011/07/10)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 溶融核燃料の取り出し開始を10年後、最終的な解体撤去まで数十年とする福島原発事故での廃炉プランを、原子力委員会や東電などが検討していると報じられました。新規の技術開発が必要で時間が要るとの説明ですが、燃料がまだ格納容器内にあるとの前提に立っている点でまず失格と指摘せざるを得ません。確かめようがない楽観的な前提を捨てて、溶けた燃料が格納容器を突き破っている恐れまで含めて廃炉を準備しなければ大きな悔いを残します。

 炉心溶融は1〜3号機いずれでも起きました。最も早かった1号機では以下のような解析になっています。地震・津波の当日午後6時過ぎには圧力容器の冷却水は干上がり、炉心は2800度の高温に達し溶融しました。



 京大原子炉の小出裕章さんは「7月8日 メルトアウトに関する小出裕章氏のコメント(現代ビジネス)」で「溶けた核燃料であるウランの塊=溶融体が、格納容器の底をも破り、原子炉建屋地下のコンクリートを溶かして地面にめり込んでいるのではないかと考えています」「溶融体の重量は100トンにもなります。圧力容器や格納容器の鉄鋼は1500℃程度で溶けてしまいますから、溶融体は原子炉建屋地下の床に落ちているはずです。その一部は地下の床を浸食し、一部は汚染水に流され周囲の壁を溶かしているでしょう」と推定しています。



 格納容器図にある上の矢印の通り溶融体は圧力容器から抜けて底に落ちました。水の原子炉注入が始まったのは翌日ですから、この時、溶融体を冷やせる水は格納容器底には無かったはずです。高温を維持していれば下の矢印のように突き破って行かざるを得ません。いま懸念されるのは地下水との接触です。

 ところが東電などの発想は旧態依然です。「燃料取り出しだけで年単位=冠水など技術的難題山積み−廃炉への作業で東電幹部」(時事ドットコム)は「原子炉については、溶融した燃料から放出される強い放射線を水で遮蔽(しゃへい)しないと作業できず、圧力容器を水で満たす必要がある。その上で配管から特殊なカメラを入れ、溶融燃料の状態や圧力容器の損傷状況を把握した上で、圧力容器の上部を開け、遠隔操作の機械で燃料を取り出す」としています。水漏れは覚悟し強制注水しながらやるそうですが、圧力容器も格納容器も損傷程度への認識が甘すぎます。

 格納容器の蓋を開けたとして底までは30メートルもの深さがあり、圧力容器から燃料を取り出す要領は通用しません。まして格納容器の底が破られているとしたら、全く別の発想で取り組まざるを得ません。解体撤去不能まで考えるべきかも知れません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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