第272回「ハードもソフトも安全装置総崩れ中国高速鉄道」 (2011/07/30)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 たかが雷だけで高速鉄道列車同士が追突事故を起こすはずがないと最初に思った通り、中国高速鉄道では安全装置はハードもソフトも総崩れになっていました。こんな高速鉄道システムを世界中に輸出しようとしていたなんて、品質管理思想の欠如にあきれ果てます。

 温州南駅の信号設備が青・赤反転の欠陥あり報道に続いて、NHKニュースの《中国高速鉄道 ソフトにも欠陥》は中国鉄道部が「列車運行管理センターでデータを収集する装置のプログラムソフトにも重大な欠陥があったことを初めて明らかにしました」「追突を防ぐため後ろの列車に送られるべきだった信号データが、列車運行管理センターにあるデータ収集装置のプログラムソフトの設計上の重大な欠陥によって送られなかった。このため、赤になるはずの信号が誤って青になり、後ろの列車の自動制御システムも働かなかった」と伝えました。

 日本ではATC、中国ではCTCSと略称されている、高速鉄道の命綱「自動列車制御システム」が働かなかった理由がようやく明らかにされました。先行列車を目で見つけブレーキを掛けて間に合わない高速でも安全を保証してくれる自動制御が効かなかったとは、恐怖以外の何ものでもありません。

 時事ドットコムの《寄せ集め技術の欠陥露呈=人材育成追い付かず−中国鉄道事故》は「CTCSと名付けられている列車運行制御システムには、中心的技術として日本の川崎重工業のものが導入されているほか、仏独など欧州各国の技術も使われている。しかし『中核のプログラムは解析すらできていない』と関係者が認めるように、つぎはぎ状態で、業界内では以前から信頼性を疑問視する声があった」と報じました。中身がブラックボックスのまま何となく組み合わせて使ってきた油断が惨事を呼んだと考えます。

 たかが雷なのに、開通したばかりの北京・上海間でも雷を理由にした電力設備の故障が繰り返されています。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版の《不十分な避雷設備も要因の一つか=中国鉄道事故で専門家》は「北京にある精華大学の何金良・教授は27日、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで」「『少なくとも私が知る限りでは、高速鉄道網の架線をつるす柱には避雷針やサージ保護装置は設置されていない』と述べた」と伝えています。国家避雷技術基準委員会の2003年基準を鉄道部は無視しているのです。

 日本の国内法では「普通鉄道構造規則」や「新幹線鉄道構造規則」で事細かに避雷設備の設置基準が示されています。ネット上でさらに探したところ「新幹線47年の歴史を創る。テツに挑み続ける技術者達」というページを見つけました。「落雷対策が安全運行上で、非常に重要な要素になる。そこでこれから紹介するのは開業以来、新幹線向けの雷対策用トランスや保安器の開発製造を一手に引き受けている企業」とあって、1キロごとに4カ所設置されている保安器の開発史が読めます。彼我の差、こんなきめ細かい仕事が中国で出来るはずがないと思えました。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー

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