第274回「全面降伏した中国高速鉄道の知的財産権主張」

 中国共産党機関紙「人民日報」から伝えたサーチナニュースの《わが高速鉄道に知的財産権はない 詐称を認める=共産党機関紙》は強烈でした。前後して、記者会見で「中国人民が創造した奇跡」と高らかに自主開発による知的財産権を主張した中国鉄道部・王勇平報道官の解任が報じられています。40人以上死亡の大事故は、確かに中国鉄道部が陥っていた虚妄から目を覚まさせる効果がありました。

 人民日報ウェブ版の「人民網」で該当記事を探してみました。題名を直訳すると《高速鉄道の自主開発知的財産権を全面検証:奇跡誕生と終止の真相》となる全部で4ページもある長文レポートがそうでした。

 冒頭はやはりサーチナの《高速鉄道「わが国は日本側の忠告を無視していた」=中国報道》とそっくりです。「記事はまず、『中国が高速鉄道技術の導入を決めた2004年、国内における営業運転の最高時速は160キロメートルだった』と指摘。川崎重工業の大橋社長は『急ぎすぎてはいけない』と忠告し、『まず8年間をかけて、時速200キロメートルの技術を掌握すべきだ。最高時速380キロメートルの技術を掌握するためには、さらに8年は必要だ』と述べたという」「しかし、政府・鉄道部の劉志軍部長(当時)は『最高時速は、大幅な引き上げが必要』、『(北京と上海を結ぶ)京滬高速鉄路では、最高時速380キロメートルを実現』と考え、強引に開発を進めさせた」

 「川崎重工業から技術提供を受けた中国の鉄道車両メーカー『南車』が、米国で特許を申請したことについても『日本の川崎重工業の説明は違っている』と指摘。契約書には、『日本側が供与した技術は、中国国内においてのみ、使用できる』と明記していると、日本側の主張を紹介した」。北京・上海間の「京滬高速鉄路が開業した直後の7月7日、中国鉄道部の王勇平報道官は『中国の高速鉄道は日本の新幹線の海賊版』という言い方に『奮起して反論』し、さまざまなデータを挙げながら、自国技術の優越性と信頼性を力説」などの要素も人民網レポートにも出てきます。

 人民網レポートにはインターネットメディア「新財網」からとしている部分もあるので、既出の報道や情報を集大成している感じもします。年を追って様々な動きがまとめられています。

 冒頭のサーチナ記事に戻ると、率直と言うべきか、かなり自虐的な表現があります。「人民網はエンジニアの発言を引用し『数年すれば国外の設計を元に、中国でもボギー・モーター・変圧器などの生産や、国外の核心部品を使ったコンバータや自動制御システムの組み立ては可能になるだろう。しかし、先頭車両の設計基準・原理・車体を広くすることのリスクの有無などは分からない。われわれにできるのは、塗料の塗り方や座席の素材の変更、室内装飾程度のことだ』と報じた」。原文レポートでは4ページ目に出ており、こう続きます。「さらに難しいのは(高速鉄道の衝突を防いでいる)列車自動制御システムのソフトウエアだ。核心技術を書き換えられない」

 長いレポートの最後はこうなっていました。8月9日に車両メーカー「北車」グループが技術的不調が続く高速鉄道列車のリコールを申し出たとした上で、「つぎはぎは一切無駄だった。7月23日、雨の夜に起きた惨劇が奇跡を終わらせてしまった」と結びます。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー