第275回「政府の除染方針に自治体が不信感持って当然」
福島第一原発周辺の高放射能汚染区域について朝日新聞は「政府が居住を長期間禁止するとともに、その地域の土地を借り上げる方向で検討」、NHKは「警戒区域で継続区域は土地買い取りも」と伝えました。地元の大熊町長は「5カ月も経って詳細な放射能測定や除染もまだしていないのに」と不信感を表明しました。細野原発事故担当相がこの1週間ほど、国による除染活動体制の立ち上げを触れ回っているのですが、まだ何の実績もありません。
何もしてくれず除染の方針すら示さない政府に業を煮やして、南相馬市だけが東京大アイソトープ総合センターと共同で動き出しています。読売新聞の《南相馬市が全域除染へ、避難準備区域解除検討で》によると政府は「原発から20キロ・メートル以遠の緊急時避難準備区域の解除を検討している。放射線量が高いままでは解除されても市民が避難先から戻って来ない懸念がある。市は補正予算を組み、早急に除染を進めることにした」「ヘリコプターなどで上空から放射性物質の汚染の状況を調べ、放射線量の高い建物や土壌がある地点などを記した汚染マップを作製。その上で、放射線量が高い場所では、同センターの助言を受けながら、市が専門的な除染を行う」「一般住宅などの民間の建物や庭の除染は、NPOのほか市民ボランティアも募って実施する」
政府は内閣官房に「放射性物質汚染対策室」、福島現地に環境省や日本原子力研究開発機構などの「除染推進チーム」を発足させる意向です。しかし、南相馬市が打ち出しているほどの除染方針すら伝わってきません。
本格的に広域で除染をする前提として、放射性物質を含んだ廃棄物の行き先が必要です。NHKニュースの《細野大臣“最終処分は福島県外で”》は大臣の意向として「当面の方針としては、市町村ごとに仮置きをお願いできないか」「中間貯蔵や最終処分については、政府として考え方を整理しており、いましばらく時間がかかる。ただ、福島を廃棄物の最終処分場にすべきではないと考えており、少なくとも私が関わっているかぎり、政府が責任を持って処理を行いたい」と説明しています。
従来から放射性廃棄物の行き先をめぐって繰り返されてきた、地域エゴのぶつかり合いを知らないのでしょうか。このナイーブさで大丈夫か心配です。
居住地域の除染の次は農地だと思いますが、政府内で真剣に検討している部門があるのでしょうか。朝日新聞の《セシウム、深さ15センチまで浸透 郡山の水田》は「5月下旬に調べた。放射性セシウム134と137の88%は深さ3センチまで、96%は同5センチまでにとどまっていたが、深さ15センチでもごく微量が検出された」と、考えられていたよりも速い速度で浸透している研究結果を報じました。こんな中、「米が本当にヤバいのは来年だ」(農家の婿のブログ)のように「除染の話は未だに来ない」「なのに、来年の種もみの注文書が回ってくる」と困っているのが農家の姿でしょう。
【参照】「避難民を帰すのに国は本格除染を実施しない気か」Blog vs. Media 時評(2011.08.10)
福島原発事故による緊急時避難準備区域が解除される見通しが報じられており、区域5市町村で実施された放射線量調査結果の伝え方を見ると、政府には2万人前後の避難民を自宅に帰すのに本格的な地域除染はする気がないようです。福島放送の《準備区域内に20ミリ超え可能性9カ所》はこうです。「避難の目安となる年間の積算線量20ミリシーベルトに達する可能性が高い毎時3・0マイクロシーベルト(高さ1メートル)を超えた宅地は田村市と川内村で計9カ所あった」「政府は『区域内の線量は基本的に安全性が確認された』とする一方、住民の被ばく量をさらに減らすために8月中に除染すべき場所や方法などの基本方針をまとめる計画だ。毎時3・0マイクロシーベルトを超えた地点を中心に除染を進める方針」
日経新聞の《避難準備区域の放射線量分布を公表 文科省・内閣府、水準は低く》によると「区域内の公共施設の線量は毎時0.1〜1.4マイクロシーベルトで、生活圏の道路上でもほとんどが毎時1.9マイクロシーベルト以下だった」としていますから、毎時1マイクロシーベルト台の汚染など気にしていない様子です。
年間被ばく線量限度を20ミリシーベルトにした学校の校庭管理方針が国内外から厳しい批判を浴びたことを忘れたかのようです。子どもがこの区域に帰ってくれば日常の生活空間で年間10ミリシーベルトくらい平気で浴びてしまいます。その可能性があるのではなく、必然的にそうなるのですから大規模な地域除染が欠かせないはずなのです。
大規模な地域除染をするには相当な準備が要ります。現在、取り除いた大量の汚染土を持っていける場所さえありません。毎日新聞の《東日本大震災:福島第1原発事故 放射線、測定・除染を急げ 児玉龍彦氏に聞く》は南相馬市で除染活動を続ける児玉龍彦・東大アイソトープ総合センター長に「私たちは、除染した後の土を残しておけず、ドラム缶に入れて持ち帰っていますが、本来は法律違反です。現行法が今回のような事態を想定していないからです。旧来の法律で手足を縛られたままで、どうやって子どもが守れるでしょう。まき散らされた放射性物質を減らすために、法整備をしてくださいと言ってきました。それを4カ月もやらずに、国は何をやっているんですか、ということです」と語らせています。
「福島中通り汚染は広く深刻、国は学童疎開を」で毎時1マイクロシーベルト台の汚染が郡山・福島など都市部に広がっていると指摘しました。だから緊急時避難準備区域も構わないのではなく、区域が無人で除染作業に支障がない今こそ取り組んで、どれくらい放射線量が下がるのか見極める先行モデルにするべきです。
何もしてくれず除染の方針すら示さない政府に業を煮やして、南相馬市だけが東京大アイソトープ総合センターと共同で動き出しています。読売新聞の《南相馬市が全域除染へ、避難準備区域解除検討で》によると政府は「原発から20キロ・メートル以遠の緊急時避難準備区域の解除を検討している。放射線量が高いままでは解除されても市民が避難先から戻って来ない懸念がある。市は補正予算を組み、早急に除染を進めることにした」「ヘリコプターなどで上空から放射性物質の汚染の状況を調べ、放射線量の高い建物や土壌がある地点などを記した汚染マップを作製。その上で、放射線量が高い場所では、同センターの助言を受けながら、市が専門的な除染を行う」「一般住宅などの民間の建物や庭の除染は、NPOのほか市民ボランティアも募って実施する」
政府は内閣官房に「放射性物質汚染対策室」、福島現地に環境省や日本原子力研究開発機構などの「除染推進チーム」を発足させる意向です。しかし、南相馬市が打ち出しているほどの除染方針すら伝わってきません。
本格的に広域で除染をする前提として、放射性物質を含んだ廃棄物の行き先が必要です。NHKニュースの《細野大臣“最終処分は福島県外で”》は大臣の意向として「当面の方針としては、市町村ごとに仮置きをお願いできないか」「中間貯蔵や最終処分については、政府として考え方を整理しており、いましばらく時間がかかる。ただ、福島を廃棄物の最終処分場にすべきではないと考えており、少なくとも私が関わっているかぎり、政府が責任を持って処理を行いたい」と説明しています。
従来から放射性廃棄物の行き先をめぐって繰り返されてきた、地域エゴのぶつかり合いを知らないのでしょうか。このナイーブさで大丈夫か心配です。
居住地域の除染の次は農地だと思いますが、政府内で真剣に検討している部門があるのでしょうか。朝日新聞の《セシウム、深さ15センチまで浸透 郡山の水田》は「5月下旬に調べた。放射性セシウム134と137の88%は深さ3センチまで、96%は同5センチまでにとどまっていたが、深さ15センチでもごく微量が検出された」と、考えられていたよりも速い速度で浸透している研究結果を報じました。こんな中、「米が本当にヤバいのは来年だ」(農家の婿のブログ)のように「除染の話は未だに来ない」「なのに、来年の種もみの注文書が回ってくる」と困っているのが農家の姿でしょう。
【参照】「避難民を帰すのに国は本格除染を実施しない気か」Blog vs. Media 時評(2011.08.10)
福島原発事故による緊急時避難準備区域が解除される見通しが報じられており、区域5市町村で実施された放射線量調査結果の伝え方を見ると、政府には2万人前後の避難民を自宅に帰すのに本格的な地域除染はする気がないようです。福島放送の《準備区域内に20ミリ超え可能性9カ所》はこうです。「避難の目安となる年間の積算線量20ミリシーベルトに達する可能性が高い毎時3・0マイクロシーベルト(高さ1メートル)を超えた宅地は田村市と川内村で計9カ所あった」「政府は『区域内の線量は基本的に安全性が確認された』とする一方、住民の被ばく量をさらに減らすために8月中に除染すべき場所や方法などの基本方針をまとめる計画だ。毎時3・0マイクロシーベルトを超えた地点を中心に除染を進める方針」
日経新聞の《避難準備区域の放射線量分布を公表 文科省・内閣府、水準は低く》によると「区域内の公共施設の線量は毎時0.1〜1.4マイクロシーベルトで、生活圏の道路上でもほとんどが毎時1.9マイクロシーベルト以下だった」としていますから、毎時1マイクロシーベルト台の汚染など気にしていない様子です。
年間被ばく線量限度を20ミリシーベルトにした学校の校庭管理方針が国内外から厳しい批判を浴びたことを忘れたかのようです。子どもがこの区域に帰ってくれば日常の生活空間で年間10ミリシーベルトくらい平気で浴びてしまいます。その可能性があるのではなく、必然的にそうなるのですから大規模な地域除染が欠かせないはずなのです。
大規模な地域除染をするには相当な準備が要ります。現在、取り除いた大量の汚染土を持っていける場所さえありません。毎日新聞の《東日本大震災:福島第1原発事故 放射線、測定・除染を急げ 児玉龍彦氏に聞く》は南相馬市で除染活動を続ける児玉龍彦・東大アイソトープ総合センター長に「私たちは、除染した後の土を残しておけず、ドラム缶に入れて持ち帰っていますが、本来は法律違反です。現行法が今回のような事態を想定していないからです。旧来の法律で手足を縛られたままで、どうやって子どもが守れるでしょう。まき散らされた放射性物質を減らすために、法整備をしてくださいと言ってきました。それを4カ月もやらずに、国は何をやっているんですか、ということです」と語らせています。
「福島中通り汚染は広く深刻、国は学童疎開を」で毎時1マイクロシーベルト台の汚染が郡山・福島など都市部に広がっていると指摘しました。だから緊急時避難準備区域も構わないのではなく、区域が無人で除染作業に支障がない今こそ取り組んで、どれくらい放射線量が下がるのか見極める先行モデルにするべきです。