第280回「低線量地域除染に支援ゼロで政府は東電を免責」

 30日の緊急時避難準備区域解除を前に政府が示した除染方針は住民の帰還を阻むものです。年間線量5ミリシーベルト以上の地域は国が除染すると言う一方、5ミリシーベルト以下の地域の除染には財政支援がゼロと判明しました。自治体や住民が勝手におやりなさい――と切り捨てるのは間違っています。年間1ミリシーベルトは法律で決まっている線量限度であり、住民には住居や周辺をそれに近づけるよう求める権利があります。お金が掛かりすぎると言うのなら、費用は福島原発事故の原因を作った東電に請求すべきです。政府の方針は被害にあった住民の要求をブロックし、東電を免責する役割を果たしています。

 毎日新聞の《放射性物質:除染の線引き 説明会で反発の声相次ぐ 福島》はこう報じました。「国は市町村に対し、年間1〜20ミリシーベルトの地域について除染計画を策定するよう求めている。環境省はこのうち5〜20ミリシーベルトの地域について、家屋洗浄、表土除去、道路の路面洗浄などの『面的な除染』を国が支援する」「県内の大半を占める1〜5ミリシーベルト未満の地域については、国の支援は側溝や雨どいなどの洗浄に限り、その他は市町村の負担としている」「除染に関する国の市町村への支援枠は約1800億円。同省はこの日の説明会で『限られた予算の中で優先順位を決めた』と理解を求めた」

 緊急時避難準備区域解除の話が出始めたころから「避難民を帰すのに国は本格除染を実施しない気か」と疑っていました。年間線量5ミリシーベルト以上とは現行法で放射線管理区域を指定する基準とほぼ同じです。さすがにここまでは守るのですが、一般住民、特に子どもや妊婦がいる住民は5ミリシーベルト以下で安心して住めるはずがありません。除染にはお金がかかります。除染した土壌を長期間保管する施設、例えば厚いコンクリートの壁の内側にドラム缶で保管するとしたら、施設建設だけでも相当な費用になりますが、それを用意しないと地域で広範囲の除染は出来ないのが現実です。

 NHKニュースの《除染 低線量地域は財政支援せず》は、自治体から「一部分だけの除染では住民が安心して暮らせない。財政的な裏付けがないと地域全体の除染を進めることができない」など反発の声が相次いだと伝える一方、「政府の福島除染推進チームの森谷賢チーム長は『国の基本的な考え方はこれまでも示してきたつもりだったが、きょうの反応を聞いて、もっときめ細かく説明しておけばよかったと思っている。今後、さまざまな事態が起こることが考えられるが、国として柔軟に対応していきたい』と話していました」としています。

 この程度の手直しでは済むはずがありません。住民の大半が避難している自治体に財政的な余力があろうはずがありません。福島市や郡山市など都市部の住民にも元の環境に近づけるよう求める権利があります。惨状を起こした原因者は東電ですから、復旧費用負担も当然ながら東電――との図式で除染政策を根本から組み直すべきです。

 【10/2続報】NHKニュース「5ミリシーベルト未満でも対応」はこう伝えました。「佐藤知事は会談で『多くの県民が被害者である自分たちがなぜ除染をみずからやらねばならないのかと思っている。本来は、国、あるいは事業者が一軒一軒回ってやるべきという意識を政府でしっかり共有してもらわねばならない』と述べました。そのうえで、市町村の判断で、年間の被ばく線量が1ミリシーベルトから5ミリシーベルトの地域で行う面的な除染についても、国が財政措置を講じるよう求めました。これに対し、細野大臣は『除染は国の責任でやるべきことで、対象地域としては1から5ミリシーベルトも含んでいる。自治体から、こういう形でやりたいと示されれば財政措置や技術措置を講じることを約束したい』と述べ、5ミリシーベルト未満のところで地域一帯で行われる除染を含め、最大限、財政措置をしたいという考えを明らかにしました」。当たり前のことをようやく認めましたが、実際にどう実行するのか、注意深く監視しましょう。