早期帰宅が困難な原発避難民に未来選択の自由を [BM時評]

 福島原発事故の避難区域は大半で、事故発生から2年以上経っても帰宅できない実態が判明しました。時間が掛かっても帰還を望む人はさておき、故郷を諦めて早く新しい人生に踏み出したい人には国が土地や資産を買い上げるなど、未来選択の自由を保証すべきです。

 朝日新聞が《避難区域の市町村、除染・インフラ整備に優先順位》で野田政権の具体的な復旧手順案を報じました。市町村別に汚染度に応じて5つに区分、最も汚染軽微な田村市と川内村で「除染作業を2013年度末に終えて早い時期の帰宅を目指す方針」です。次の区分「おおむね20ミリシーベルト未満」である南相馬市などになると、除染作業の一方で大津波で破壊されたインフラ整備も進めなければなりません。

 20〜50ミリシーベルトの飯舘村などは「放射線量が低い地域と比較的高い地域が混在しており、まずは地域全体を20ミリシーベルト以下にすることを目標にする」段階であり、実現できる時期のめどはありません。さらに高い汚染度の大熊町と双葉町では高汚染の除染方法を調べるモデル事業に止まります。

 河北新報の《焦点/町外避難者調査/「浪江帰還望まず」3割》が「放射能汚染で生活環境を取り戻せないと見越す人が多いためだ。町は帰還の姿勢を崩していないが、町民の3人に1人は帰還を望まない結果が示され、町の存続に影を落としている」と伝えたように、相当多数の避難民が新天地での生活を始める意向に傾いています。

 これまで福島県や地元市町村は帰還・帰宅だけを掲げて作業を進めてきました。しかし、元の生活はもう取り戻せないと考える人、限りある人生の何年もの期間、ただ待つだけに費やせないと考える人が出て当然です。政府の施策には「帰還しない」選択肢が抜け落ちています。避難区域に残した財産を事故以前の評価で買い上げるなど支援するのは、原発の安全審査でゴーサインを出した当事者である政府として当然の責任です。早急に枠組みを整えるべきです。

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