愚かな核燃コスト比較:再処理試運転を止めよ [BM時評]

 核燃料サイクルの近未来コスト比較についての報道はあまりにお愚かです。原子力委員会の事務方が核燃料再処理路線の維持を意図して、不自然で不思議な条件設定をして試算したものだから本質が見えなくなっています。読売新聞の「核燃料の直接処分、再処理より2兆円割高」と毎日新聞の「使用済み核燃料:全量再処理は高コスト」が、同じ発表資料から書かれたとは思えないでしょう。

 東京新聞の「原発ゼロが最安7.1兆円 使用済み核燃料処理費用」にあるように、脱原発ケースのコスト計算が初めてされた点に意味があるくらいなものです。直接処分が最も安いのは世界の常識です。

 「直接処分の場合、再処理施設の廃止費用約五兆円が上乗せされているため割高感はあるが、それでも原発ゼロとすれば、処分する使用済み核燃料も少ないため、安く済むとの結果だった。逆に、原発への依存度を高めるほど費用もかさみ、直接処分と組み合わせると最も高コストとなった」

 再処理工場の建設費が2兆円あまりなのに廃止費用に5兆円も掛かる理由は、高レベル放射能で汚染された「死の空間」が出来ているからです。全て再処理するケースが比較的低いコストに抑えられている理由は、再処理工場廃止を遠い将来に先送りして廃止費用を計上しない「手品」を使っているからにすぎません。実際は再処理工場をフル稼働していけば汚染はどんどん酷くなります。

 核燃料サイクル見直しを前提にこのようなコスト論議をするなら、真っ先にするべきは青森・六ケ所核燃料再処理工場で再開された試運転を直ちに中止する措置です。残念なことに、試運転で高レベル汚染された場所が増えてきましたが、それでも現状で凍結すれば5兆円よりずっと安く済むはずです。既定路線を守る、即ち既得利権を守るために、将来、税金か電気料金で賄わねばならない廃止費用を、むざむざ膨らませている現状は犯罪的です。

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