電力需給検証の大雑把さには怒りたくなる [BM時評]

 何が第三者専門家による需給検証だろうと精度の貧しさに驚き、西日本4電力の5%節電で関西電力管内の不足を補う方針には「算数が出来ますか」と問いたくなります。野田政権が大飯原発の再稼働一辺倒でやってきたために電力不足対策の準備が遅れた点を勘案しても、まだ検証に値しない低レベルです。日本の官僚の「優秀さ」はどこに消えたのでしょうか。

 毎日新聞は「需給検証委:関電に4社融通拡大 5%節電で制限令回避へ」と伝えています。中部、北陸、中国、四国の4電力はこの夏も余力があるのだけれど、最大供給力が445万キロワット足りない関電のために「5%の節電」を上乗せして4電力計459万キロワットを生み出し、補うと言います。関電は関電で不足分(14.9%)に対応する20%節電をするべしとしています。両方同時に実施したら、計算する必要もなく余力が2倍になってしまいます。

 もともと電力各社が出した最大ピーク電力量は軒並み過去最大を上回る「超猛暑」型で、検証委ではこれに対する刈り込みはほとんど出来ませんでした。わずかに形ばかり下げただけです。このような無茶な最大ピークに対して計画節電を実施して経済活動を実際に縛る意味を考える必要があります。ピークが続くのは僅かな時間です。ピークをならす政策的な提案がされています。

 電力融通と言えば、東の50ヘルツ地域から西の60ヘルツ地域に周波数変換して流せる100万キロワット分が、今の計画から消えています。余裕がある東電からの融通は当然、考えるべきなのです。また、日本列島は東西に長いので電力ピークの時刻も東西でずれます。従来のように単一の電力会社だけで考える問題では無くなっているのに、その視点も欠けています。ピーク時にバッファーになる揚水発電の利用方法も、東電まで巻き込んで全国規模で運用を考えるべきです。関電の説明は関電管内での収支に止まっていて、全国で考えればもっと大きな余裕が生じます。

 政府としての計画決定は今週前半になるようです。それを見て改めて論評しますが、12日の「第6回 需給検証委員会」で開示された資料類を読む限りでは、事務局側は完全に消化不良です。参加した専門家たちもかなり怒っているようです。「国家戦略室」とかいう生煮えの組織ではなく、完全に独立した機関に事務局を委任すべきでした。

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