第306回「目が離せぬ5月の太陽:直径を観測、寒冷化」
金環日食で太陽への関心が一気に高まり目が離せなかった5月でした。国内研究者がリードして「太陽の直径 金環日食で計算」(NHK)されたばかりか、4月の《太陽観測衛星「ひので」、太陽極域磁場の反転を捉えた》で予測された「四重極構造」化と寒冷化が始まっていると考えられます。
《今月21日の金環日食の際には「ベイリービーズ」と呼ばれる月の谷間からこぼれた小さな光が玉のように連なる珍しい現象が全国で観測されました》《光の玉が月のどの谷間によってできているのかを月探査衛星「かぐや」のデータと照らし合わせて割り出し、観測地点からその谷間を通る直線を引いて太陽の中心との間で直角三角形を作りました。その結果、太陽の半径が求まり、最終的に太陽の直径は139万2020キロと精度よく計算できたということです》
太陽の直径は望遠鏡の直接観測では1300キロものばらつきがありました。金環日食の限界線は日本を縦断しており、多数のアマチュアにも呼びかけて限界線を現場に行って確定することで太陽直径を決めようとしました。国立天文台の相馬充助教らによる学会発表のプレプリント「2012年5月21日の日本における金環日食限界線」を見ると、限界線を確定するのも簡単ではなく、定義の仕方を変えると2キロも動いてしまうもののようです。
現場の観測も難しく「皆既日食とは違って周りからの強い光のノイズを受ける厳しい環境下での観測になるため,金環日食になったかどうかを判断するのが困難で,限界線の位置が正確には定められないということが起こりうる.そのため,太陽の半径を正確に求めるためには,限界線決定のための観測と並行して,ベイリーの数珠が現れたり消えたりする時刻を正確に測定する観測を行うことも必要」となりました。苦労がしのばれる話ですが、国産のアイデアを生かし、ともかく測定に成功したのを喜びたいものです。
◆ ◆
太陽磁場の「四重極構造」化については冒頭にあげた、国立天文台やNASAなどによるプレスリリースのほかに、《「ひので」による今回の観測の意義と最近の太陽活動について》に詳しくまとめられています。太陽観測衛星「ひので」が4年間にわたり安定した観測を続けた成果です。
《予想される時期より約1年早く、北極磁場がほぼゼロの状態に近づいていることが、2012年1月の観測で発見されました。すなわち、北極の磁場を担う斑点状の磁場の数が急速に減少し、低緯度から逆極性の斑点が現れました。この結果、現在太陽の北極域では、逆極性の磁場の大規模な消滅と極性の反転が発生していると考えられます。この観測の結果から、太陽の北極磁場がまもなくマイナスからプラスに転じると予想されます。一方、驚くべきことに、南極では極性反転の兆候がほとんどみられず、安定してプラス極が維持されていることを、「ひので」は確認しています》以下がそうして生まれる四重極構造(北極プラス・南極プラス)です。 太陽の黒点数が減って活動が弱まった時期に最近ではマウンダー極小期やダルトン極小期があり、その開始時期前後に四重極構造が現れたと考えられています。それぞれの極小期に京都では冬の気温が2.5度下がりました。 「最近の太陽活動についてのまとめ」はこう述べています。「太陽周期が10.6年から12.6年に2年伸びている」「太陽活動は上昇しているが、黒点の数は以前のサイクルより少なく、また北半球に偏って発生している」「北極の負極磁場が大幅に減少し、現在正極に反転中。予想された反転の時期より約1年早い」「一方、正極磁場が卓越していた南極は安定な状態を維持しており反転の兆候はない」「以上から、太陽の基本的対称性が崩れていると考えられる」「同様の事象は、マウンダー極小期、ダルトン極小期の開始前後に発生していたと推定され、太陽が従来と異なる状態になっていると推測される」
このほか補強する観測事実として「過去45年間の観測史上最多の宇宙放射線量」が指摘されています。太陽風活動が活発ならば宇宙放射線は太陽圏内に侵入しにくいのですが、低下しているために入ってくると考えられます。今後は10月ごろに北極域の集中観測をして予測の推移を確かめることにしています。
《今月21日の金環日食の際には「ベイリービーズ」と呼ばれる月の谷間からこぼれた小さな光が玉のように連なる珍しい現象が全国で観測されました》《光の玉が月のどの谷間によってできているのかを月探査衛星「かぐや」のデータと照らし合わせて割り出し、観測地点からその谷間を通る直線を引いて太陽の中心との間で直角三角形を作りました。その結果、太陽の半径が求まり、最終的に太陽の直径は139万2020キロと精度よく計算できたということです》
太陽の直径は望遠鏡の直接観測では1300キロものばらつきがありました。金環日食の限界線は日本を縦断しており、多数のアマチュアにも呼びかけて限界線を現場に行って確定することで太陽直径を決めようとしました。国立天文台の相馬充助教らによる学会発表のプレプリント「2012年5月21日の日本における金環日食限界線」を見ると、限界線を確定するのも簡単ではなく、定義の仕方を変えると2キロも動いてしまうもののようです。
現場の観測も難しく「皆既日食とは違って周りからの強い光のノイズを受ける厳しい環境下での観測になるため,金環日食になったかどうかを判断するのが困難で,限界線の位置が正確には定められないということが起こりうる.そのため,太陽の半径を正確に求めるためには,限界線決定のための観測と並行して,ベイリーの数珠が現れたり消えたりする時刻を正確に測定する観測を行うことも必要」となりました。苦労がしのばれる話ですが、国産のアイデアを生かし、ともかく測定に成功したのを喜びたいものです。
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太陽磁場の「四重極構造」化については冒頭にあげた、国立天文台やNASAなどによるプレスリリースのほかに、《「ひので」による今回の観測の意義と最近の太陽活動について》に詳しくまとめられています。太陽観測衛星「ひので」が4年間にわたり安定した観測を続けた成果です。
《予想される時期より約1年早く、北極磁場がほぼゼロの状態に近づいていることが、2012年1月の観測で発見されました。すなわち、北極の磁場を担う斑点状の磁場の数が急速に減少し、低緯度から逆極性の斑点が現れました。この結果、現在太陽の北極域では、逆極性の磁場の大規模な消滅と極性の反転が発生していると考えられます。この観測の結果から、太陽の北極磁場がまもなくマイナスからプラスに転じると予想されます。一方、驚くべきことに、南極では極性反転の兆候がほとんどみられず、安定してプラス極が維持されていることを、「ひので」は確認しています》以下がそうして生まれる四重極構造(北極プラス・南極プラス)です。 太陽の黒点数が減って活動が弱まった時期に最近ではマウンダー極小期やダルトン極小期があり、その開始時期前後に四重極構造が現れたと考えられています。それぞれの極小期に京都では冬の気温が2.5度下がりました。 「最近の太陽活動についてのまとめ」はこう述べています。「太陽周期が10.6年から12.6年に2年伸びている」「太陽活動は上昇しているが、黒点の数は以前のサイクルより少なく、また北半球に偏って発生している」「北極の負極磁場が大幅に減少し、現在正極に反転中。予想された反転の時期より約1年早い」「一方、正極磁場が卓越していた南極は安定な状態を維持しており反転の兆候はない」「以上から、太陽の基本的対称性が崩れていると考えられる」「同様の事象は、マウンダー極小期、ダルトン極小期の開始前後に発生していたと推定され、太陽が従来と異なる状態になっていると推測される」
このほか補強する観測事実として「過去45年間の観測史上最多の宇宙放射線量」が指摘されています。太陽風活動が活発ならば宇宙放射線は太陽圏内に侵入しにくいのですが、低下しているために入ってくると考えられます。今後は10月ごろに北極域の集中観測をして予測の推移を確かめることにしています。