大飯再稼働の稚拙な仕掛け、橋下流の限界見た [BM時評]

 野田政権は大飯原発再稼働をめぐり反対だった関西広域連合から容認姿勢を引き出せたことで、地元福井の了解を得て、各種世論調査に示された反対の声多数を押し切る構えです。30日に起きた逆転劇に事前のシナリオが存在したことは明らかであり、「夏だけ稼働」を仕掛けたと見られる橋下徹大阪市長の政治的駆け引きの稚拙さも見えました。

 30日の関西広域連合で細野原発相は稼働のための「新安全基準」を暫定基準であると格下げし、これを受けた首長から「暫定基準なら対策も暫定になる」との反発が出たものの、関西広域連合長の井戸敏三兵庫県知事は「安全判断は暫定的であり、再稼働は限定的なものとして(政府に)適切な判断を強く求める」との声明を発表するに至りました(読売新聞「大飯再稼働、自治体の容認受け近く決定…政府」)。安全基準を格下げすることで限定稼働が出来る、一般人には理解しにくい「腹芸」です。

 午後9時半にリリースされた時事通信の「橋下市長『限定は外せない』=大飯原発再稼働」では≪「限定ということが入らなければ、大飯以外もどんどん動かせ動かせという話になる。『限定的な』は外せない枠だ」と述べ、大飯原発再稼働は電力需給逼迫(ひっぱく)時に限るべきだとの持論を強調した≫となっているのですが、午前零時を過ぎると橋下市長の思惑は早くも崩れます。

 「新規制機関が判断=原発の『限定稼働』論で―枝野経産相」(jp.wsj.com)は夏場限定稼働ではない旨を伝えました。≪枝野幸男経済産業相は30日、関西電力大飯原発の再稼働に関連して「国会で審議中の新たな規制機関ができれば、すべての原発について(新たに策定する安全基準を既存原発にも適用する)バックフィットが求められ、判断されることになる」と述べた。関西広域連合が原発の再稼働を限定的なものとするよう求めたことに対し、行政から独立した立場として新設される原子力規制庁などが判断するとの認識を表明した発言だ≫

 国会審議中の新しい原子力規制組織がどのような形になるにせよ、原子力安全委員会が再稼働に必要と求めている過酷事故を扱うストレステスト第2段階を含めて、新安全基準を策定するのには最低でも半年以上かかるでしょう。需要期の夏場限定稼働を打ち上げた橋下市長の意向は、「稼働オーケー」だけを吸い上げられて放置されることになります。

 実は井戸知事も「『限定的』とは稼働期間の限定の意味もあり、政府の基準は規制庁ができるまでの限定的なものという意味もある」(日経新聞)と夏場限定稼働としない解説をしています。大阪府や大阪市で「お山の大将」を演じている橋下市長の限界でしょう。橋下氏の下に集まっているエネルギー専門家は原発稼働なしでもこの夏は乗り切れるとの見通しを出していたのであり、ブレーンの使い方・活かし方の点でも禍根を残す逆転劇でした。

 【参照】インターネットで読み解く!「原発再稼働」関連エントリー