第318回「尖閣対立に危険な臭い:『戦闘』すら可能性が」 (2012/09/16)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 中国の巡視船6隻による尖閣列島領海侵入、公船に対し実力行使が出来ず併走するしかない海上保安庁巡視船を見て、間もなく休漁期が開けて中国漁船が混じると厄介に思えました。領海に入る漁船は拿捕出来ますが、中国巡視船が割ってはいるとどうなるか。日本が実効支配している現状を崩すのが目的ならば、領海に入って操業する中国漁船を日本側に拿捕させなければよいのです。日本に備えがあるか心配なところに、台湾側がもっと危険な計画を持っていました。

 レコードチャイナの《<尖閣問題>漁船100隻超による抗議活動を計画=台湾当局が護衛―台湾》は「台湾紙・中国時報によると、台湾の海洋巡視部局は13日、漁業警備の現場をメディアに公開した。場所は尖閣諸島から45カイリ離れた地点。責任者はもし9月下旬に漁民、あるいは台湾の議員が尖閣諸島上陸を希望するならば、特殊勤務隊員を派遣して日本側の妨害を排除すると約束した」と伝えました。

 日本と台湾の公権力に属する者同士が発砲はしないにせよ、直接ぶつかって何らかの実力行使をする――『戦闘』と呼んでいい事態が危惧されます。海上保安部門が決定できる軽微な問題ではないと考えます。中国巡視船との接触や漁船拿捕への妨害も発生すれば、これに近いレベルです。

 中国本土での日系工場焼き討ちやトヨタ販売店多数の襲撃には意外な感じを持ちました。しかし、新華社の《日本車破壊の4人を逮捕 日本製品ボイコットのデモで=中国広東省》の論理を注意深く読めば、中国市民の私有財産を脅かすのは犯罪だが、中国市民が購入する前の日本製品は別と受け取れます。「市民が日本車を購入すれば、私有財産となる。市民が長い間資金を貯めて買ったものかもしれない。日本製品のボイコットは個人の考えから出発するものでも、何の理由もなしに他人の日本車を壊すことは私有財産を脅かす行為だ」

 「大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜」の「毛沢東の肖像画まで登場した反日デモの性質をざっくり考えてみた」は「そもそも中国において、都市部で人間が百人以上集まって何かをガヤガヤとやっていたら、それは金儲けやバーゲンに関係したものでない限り、基本的にはほとんどがどこかの誰かの意を受けた政治闘争や大衆動員だと考えるべきものなのだ」とした上で、日本メディアが往々にして唱えるネットの圧力による暴走を否定します。「ネット上で『反日言論』が盛り上がっているのは事実だが、それは3.のように当局の政治的正義として反日が示されているから、ネットが活発化しているに過ぎない。ニワトリとタマゴの順番が逆である」

 これまでとは明らかに違う局面に踏み込んだ中国側に対し、日本政府は全く準備が出来ていない印象です。竹島問題であった「解決しないことをもって解決とする」合意を破って右往左往している韓国大統領と、尖閣列島での「棚上げ」原則を国有化で侵した野田首相とはほとんど同じです。実効支配している側は事を荒立てずに推移させていれば有利なのに、自分で問題を顕在化させた愚行として記憶されるでしょう。『戦闘』行為など呼び込まないよう願うのみです。

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