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第320回「中国政府主導だった反日デモと愛国教育の正体」 (2012/09/26)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 尖閣をめぐり過去にない激しさだった反日デモが中国政府の「お達し」でぴたりと収まった後、ネット上に中国人ライターによる反日デモの体験ルポが登場しています。制服の警官が参加登録からバス移動、決起集会まで仕切る報告に、官製茶番劇とのお付き合いはもうたくさんだ――との思いがしてきます。さらに中国外に出ている中国人が冷静に語る愛国教育の実情もネットで読めます。こちらも歴史とは離れた「扇動」でしかない中身に、自分で相対化できる知識人はともかく、巨大な人口の民との相互理解は道遠しと考えざるを得ません。日本では右傾化が進み、日中ともに暗雲が覆いつつあります。

 「大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜」の《反日デモ参加中国人「修学旅行のバス状態でした」 現地からの反日デモ・レポート 後編》は満州事変の記念日、9月18日に瀋陽でのルポです。

 ネットで知った集合場所に行くとバスが待っていて《車上には制服姿の警官が数人おり、規定の登録用紙を配られて「名前」「ID番号」「電話番号」「QQ(チャット)の番号」「住所」「家族構成」などを記入させられた》。人民解放軍瀋陽軍区・軍人クラブ内にある八一劇場で決起集会。《集会中には「理性的な愛国を」「国内外の記者がこれを見ている、破壊活動はするな」とお達し》。バスが出発、警官が敬礼。しかし日本領事館から遠ざかるコースに不満を言うと《車内で警官が「政府の方でこういう段取りになってるから」「デモバスはそれぞれルート違うから」「最後は領事館行くから」と 説明するも、車内のデモ隊は不満》で、「下ろせ」と騒ぎが起きて車内のビデオで記録されています。

 反日の根っこにあるのが愛国教育であり、「チェンマイUpdate」が《中国の反日暴動に対するタイにいる一中国女性の見方》で、バンコクでジャーナリストをしている中国女性ツァン・チーさんの見方を紹介しています。《小学校に入り、教わる歌は愛国歌ばかりである。「母国への頌歌」、「共産党なしには新中国はなかった」、「太陽は紅く、毛主席は最愛の人」などである。学校で見る映画は、革命映画ばかりである。その中で悪者は、哀れであほで邪悪な、いつも日本人か地主である。ヒーローは、赤軍兵士、共産党メンバー、農民、労働者同胞となる》

 《こういった独善的な刷り込みは大学までも続くので、私は、大学では強制的で時間を多くとるマルクス・レーニン主義のイデオロギーと共産党の主義・政策を教える「政治講義」ををスキップしたほどだ。こういったものが多く教えられる一方で、市民としての権利をいかに要求し、使うかといったことは一切教えられてこなかった。前向きな姿勢で、合理的で、平和的で、合法的なやり方でいかに価値や力を獲得すべきかも教えられない。我慢して、交渉し、妥協する方法についても教えられない。他人の利益を尊重することも教えられない。ただ教えられるのは、「敵を倒せ!」ということだけである》

 今度の事態について、レコードチャイナの《<反日デモ>ナショナリズムの操作が招いた報い、負のパワーが中国社会を覆い始めた―香港誌》は自由な香港からの視点で危機感を表明しています。

 《今回の暴動と化した反日デモは、中国の歴史上のターニングポイントに位置づけることができる。それは、この10年続いた「繁栄の時代」の終わりと動乱の時代の幕開けを意味している。社会の中の「悪」のパワーがさらに呼び起こされ、すべての人(特に都市部の中産階級)を新たな恐怖のどん底に陥れた》《もはや、どんなに立派なショッピングセンターや高級ホテルに隠れても、安心感は全く得られない。人々は否が応にも現政権の「維穏(社会安定の維持)」体制に頼らざるを得ない。だが、今後はこうした悪循環が加速することで、理性を求める声は一層出しづらくなり、一部の極端な勢力が中国社会全体を牛耳るようになっていくだろう》

 尖閣諸島をめぐる中国の軍事的な威嚇発言と行動で、日本でも日米安保体制が完全に見直され、かつ集団的自衛権行使が表面に躍り出るまでになっています。日本の政界の右傾化は避けようもなく、それが中国に跳ね返る流れにならざるを得ません。

 【追補】さらに、ニューズウイーク「中国ナルシスト愛国心の暴走」にこうあります。《とはいえ、被害者意識は中国当局が育ててきたいびつな愛国主義の一面にすぎない。それと同じくらい重要なのは、中国政府が自国民に刷り込んできた「身勝手に国益を追求する他の大国と違って、中国は国際社会で正義を実践する国だ」というイメージだ》
《一部の外交当局者や専門家は間違いなく、状況をもっときちんと把握している。彼らは「中国の外交は正しい」というイメージに違和感を覚えているかもしれないが、それを公言することはない。政府の外交政策について民衆やエリート層が受け入れる批判は、政府が弱腰過ぎるというものだけだ》

 【参照】インターネットで読み解く!「反日」関連エントリー
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