暴走発言の安倍総裁、色あせる橋下快刀乱麻 [BM時評]

 民主党の立て直しをしないで解散した野田首相、そこまでしなくてもと思える暴走発言の安倍総裁、太陽との合流優先で快刀乱麻ぶりが色あせてしまった橋下維新――どの党も踏み外しだらけです。読売新聞の緊急世論調査《比例投票先、自民26%民主13%…第3極失速》が示しているのは、総選挙を前にした党派性への収束でしょう。ふだんは浮気をしていた有権者が本筋の政党に回帰する現象で、前回総選挙に比べて民主は激減、自民の優位は動かず、安倍総裁は敢えて政策的危うさを見せるべきではありません。

 法律で禁止になっている建設国債の日銀全額引き受けを言い出した安倍総裁は「日銀の政策金利をゼロにするか、マイナス金利にするぐらいのことをして、貸し出し圧力を強めてもらわないといけない」とまで発言しています。「暴走する安倍晋三氏」で池田信夫氏は「日銀引き受けで増えるのは政府支出であり、これは建設国債を民間が買って日銀が買いオペで吸収するのと同じだ」「財政規律が失われ、『日本政府はいよいよ市場で国債を消化できなくなった』というメッセージを世界に送って、国債バブル崩壊のきっかけになるおそれが強い」「こんな暴走を続けていると、安倍氏が恥をかくだけでなく自民党も選挙でつまずくだろう」と手厳しく批判します。

 読売緊急世論調査は衆院比例代表選の投票先がどう推移したかも掲示しています。維新の会は8、9月は16%、10月13%、11月始め12%から解散直後8%まで落ちています。太陽の党も5%に止まり、第三極に圧倒的な風が吹く状況ではありません。毎日新聞《日本維新の会:「大同団結」政策骨抜き…太陽の党と合流》が「合意した基本政策は合流を優先し、国民の関心が高い政策で骨抜きやあいまいさが目立つ。橋下氏は大阪市長として『2030年までの原発ゼロ』を表明、みんなの党との政策合意にも脱原発が盛り込まれた。ところが、基本政策には安全基準など『ルールの構築』とあるのみだ」と伝えるように、橋下氏から持ち前の歯切れの良さが失われている点が響いています。これは国政政党化したころから始まっています。

 小選挙区とブロック別比例区からなる総選挙ですが、やはり中心は300小選挙区です。ここでは前回選挙からの共闘態勢を守っている自公が圧倒的に有利です。民主は離党者続出で大量の空白区を抱え解消は無理です。資金面でも不安がある第三極が知名度のある候補者を用意するのは難しく、維新の1次公認は47人にすぎません。勝敗は見えていて民主党政権維持の算段が全くないのに解散に打って出た野田首相は自己満足できても、政権獲得に再起できないほど民主党を惨敗させる可能性があります。

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