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第349回「中国になお無償援助、国内報道しない人民日報」 (2013/03/20)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 もう終わっていると考えていた中国への無償援助が続いていると人民日報日本語版が伝えました。人民日報ウェブを検索すると、中国国内報道はされていません。メディアを使った詐術をいつまで続ける気でしょう。中国側でどこまで意図的に操作されているのかは知れませんが、3兆円を超える有償援助を含めた対中ODAの存在が中国国民から隠されてきたのは事実です。尖閣列島をめぐる対立が険しい中で見つけたこのケースを追ってみます。人民日報日本語版に3月15日掲載の「日本、陝西省の医療環境改善を無償援助」が問題の報道です。


 場所は西安の南300キロほどの安康市白河県、山に囲まれて袋小路になった地区にあり老朽化した茅坪中心衛生院(診療所)が援助対象です。「日本が無償で提供する11万ドル(約1058万円)の援助資金は、同衛生院の医療・技術棟建設に充てられる。完成後は、現地の医療環境が改善され、住民の医療水準が大きく向上する見込み。人民網が報じた」

 「人民網が報じた」に引っ掛かりを感じて「人民網検索ページ」に行きました。記事を見つけるのに確実な方法はピンポイントの固有名詞を使う方法です。「茅坪」を入力すると1857件がヒットしました。この中に「日本」を含む記事があるのか――43件がヒットし、無償援助プロジェクト調印の記事はありません。しかし、昨年11月に陝西省の担当者が日本大使館援助を受ける下調べに茅坪中心衛生院を訪れた記事はありました。中国国内向けに援助調印記事が存在するならば、この検索方法で発見できることを示しています。

 日本大使館援助とあるので「在中国日本国大使館」に行くと「草の根・人間の安全保障無償資金協力(概要)」がありました。2011年度分までしか実績が表示されていませんが、実は2012年度も継続中でした。外務省の対中ODA無償資金協力ページでは2009年以降は留学のための人材育成奨学計画が並んでいるだけです。外務省はどうして国内向けのページで隠しながら、こそこそ無償援助を続けるのか、疑問でなりません。

 気になって調べると、昨年3月16日付の中国網日本語版「日本、湖南省への無償援助プロジェクト調印式が挙行」もありました。しかし、これも中国国内向けは発見出来ません。たまに日本語版ニュースでだけ援助を伝えるのは日本国大使館へのサービスでしょうか?

 山奥の財政難の寒村に医療援助をするのが無駄とは言いませんが、「2011版中国の対外援助白書(全文)・付録3 中国・アフリカ協力フォーラム北京サミットで中国政府が発表した8項目の措置」などを読むともう自国のことは自分で始末しなさいと言うべきです。「アフリカのために30ヵ所の病院をつくり、3億元の無償援助を提供することで、アフリカのマラリア対策の支援に協力し、アルテミシニンの提供および 30ヵ所のマラリア対策センターの設立に用いる」

 2005年に書いた「反日デモ始末に苦渋の続きを思う」で、ある理工系知日派の対中ODAへの複雑な思いをこう伝えました。

 《1月20日付の「対中ODA議論で思うこと、『感謝』は意味あるか?」は3兆円にのぼる対中国の円借款を数年前まで知らなかったと記している。今では「北京の地下鉄に乗る時に『円借款のお陰』」とも思えるようになったが、「北京首都国際空港の玄関の前に『この空港の建設では円借款を使っていた』と書いた看板を掲げたらどういう光景になってしまうかも想像してみた。多分、この看板を見た中国人乗客は、豪華な天井から、戦争によって死んでしまった先人の悲しみ恨む目が見えてくるような感じがするかもしれない」と述べている。その上で「中国人の屈辱感」を長引かせるODAは廃止してよいと考える》

 実質的な戦後賠償として続いてきた対中ODAで、中国国民感情の融和が出来なかった以上、安易な援助継続は日本側の国民感情をさらに悪くします。中国の政治家が対中ODAに触れるケースが増えたと言われつつも、今回の人民日報のおかげで相変わらず国民一般向けには報道できない「タブー」で在り続ける実態が明らかになりました。

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