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第361回「進まぬ除染、見直す司令塔不在で時と金を空費」 (2013/05/19)

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(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福島原発事故発生から2年余が経過して除染が計画の5%しか進んでいないとNHKが伝えました。放射線量低減効果が疑わしいところが多く全体計画を見直すべきなのに、国には補助金で急がせる考えしかありません。除染して避難住民を帰還させる、あるいは現在の居住地を年間1ミリシーベルト以下の水準まで下げることが現実的に無理ならば、考え方を変えねばなりません。虫食い状態で高線量地域が残れば町として機能しなくなる恐れがあり、無駄に除染費用を投じるより住民の判断で移住を選択するべきです。除染を担当している環境省には戦略転換をする権限はありません。

 NHK「除染の実施地域は対象の5%以下」はこう報じています。「これまでに除染が行われたのは、国が担当する地域では235平方キロメートルのうちおよそ9平方キロメートルと、全体のおよそ4%、市町村が担当する地域では、対象の住宅38万戸余りのうち、およそ1万9000戸と、全体の5%以下にとどまっていることがNHKの調査で分かりました」

 「除染が行われても、放射線量が基準とされる値まで下がらないところが多いことが、NHKが入手した福島県内の21の市町村のデータを分析した結果、明らかになりました。データは、除染後の各住宅周辺の放射線量の平均を『地区』ごとに取りまとめたものです。それによりますと、放射線量が、基準とされる年間1ミリシーベルト、1時間当たり0.23マイクロシーベルト未満にまで下がらなかったのは、43地区のうち33地区と、77%に上っています」

 市町村が除染の計画を立てて実施に入って少なくとも1年以上は経過しています。復興庁は4月中旬、除染と道路の復旧工事を同じ業者に委託できるようにして効率化するなどの施策を発表しましたが、除染そのものの費用は2012年度予算で3721億円、13年度予算案で4978億円に過ぎません。徹底的に実施すれば数十兆円、数百兆円とも言われる膨大な費用を最初から想定していません。東電が費用を負担する建前から、民間企業として破綻させないとすれば無理です。

 2011年9月にリリースした「除染に期待が持てない福島市渡利地区調査結果」で通常の除染には期待が持てず、破壊・再建が必要になるとしました。《除染モデル事業は通学路の安全確保を意図して実施されましたが、「『除染』の前後で空間線量は平均して68%に低減したが、半分以下にもなっておらず、除染とは言えない。依然として子供らの通学路は1〜2μSv/hにあり、場所によっては 4μSv/hに達したままである。除染作業の実態としては堆積した泥を取り除いたということに尽きる模様である。アスファルトやコンクリートが汚染しており、除染するにはこれらも取り除く必要がある。また、道路に面する住宅の庭やコンクリートブロックについても除染/取り除く必要がある(これは街の破壊を意味する)」と厳しい現実を指摘しています》

 現実に実施されている除染作業は屋根や壁なら洗い流すだけであり、汚染物質が溜まりやすい雨樋すら交換することがありません。再除染を求める声が自治体から上がっていますが、同じ手法をとれば結果は変わらないでしょう。

 チェルノブイリに詳しい菅谷昭・松本市長が「政府、汚染の深刻さを未だ理解せず」でこう主張しています。「国は、除染に過度に期待しすぎていると思う。安全レベルまですべてを除染するためには、恐らく数十〜数百兆円がかかるのではないか。特に福島県は土地の7割が山林であり、その山を完全に除染するためには木を根こそぎ切り落とし、岩肌がすべて見えるほど徹底して行う必要がある。そんなことは無理だろう。さらに平地でも、政府は表土を5〜10cm取り去れば除染効果があるとしているが、それでは到底追いつかず、例え20cm削ったとしても、チェルノブイリの高汚染地域では25年経っても住めないことが分かっている」

 「除染は必要ではあるが、除染とはお金がかかる割りに効果は十分得られないということだ。中途半端に除染しても元のようには戻らず、結局、自然に放射性物質が無くなるのを数十年以上かけて待つしかない。それなのに数年で帰還させるような指示を国のトップが出すということは、やはり、政府は汚染状況がいかに深刻なのかがわかっていないのだ」

 効果が出ない除染待ちで避難住民の時間は無為に過ぎていきます。福島市や郡山市などの都市部でも放射線管理区域相当の高汚染地域に住民が住み続けています。ちょっとやそっとの除染では年間1ミリシーベルトに下げることが出来ないところが多いと判明した現在、時間と費用の空費は止め、どうすべきか考え始めるべきです。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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