第393回「円安が輸出増加に結び付かぬ9月貿易統計の衝撃」
アベノミクスがもたらした円安で輸出は順調に回復と思い込んでいたら9月貿易統計が冷水を浴びせました。見かけの輸出額が前年比11.5%増えても、輸出数量は1.9%のマイナス。産業弱体化が深刻な様相です。大幅な円安なので同じドル建て輸出を日本円に換算したら輸出金額が膨らむのは当然です。問題の数量で見ると自動車を中心にした輸送用機器や化学製品は好調ですが、日本が得意としていたはずの電気機器や一般機械が足を引っ張っています。大和総研の「9月貿易統計」から「海外景気と輸出数量、貿易収支」グラフを引用します。
主要な先進国の輸出がリーマンショック前の水準に戻ったのに日本の輸出数量は回復せず、昨年、一段の下落を経験しました。アベノミクスが発動されても僅かな持ち直しでもみ合っている状況で、海外景気の波から外れて沈んだままです。「輸出数量指数を季節調整値で見ると(季節調整は大和総研による)、前月比▲1.2%と、2カ月ぶりの低下となった。地域別に見ると、EU向けが増加したものの、米国向けおよびアジア向けの減少が全体を押し下げた。欧州の景気底打ちを受けて、EU向けの輸出数量についてはこのところ持ち直しつつある。一方で、米国向け、アジア向けの輸出数量が伸び悩んでおり、輸出数量全体としては概ね横ばい圏での推移となっている」
内閣府から10月末にマンスリー・トピックス「輸出の増勢に一服感がみられる背景について」が出されています。比較的順調だった8月までのデータしかありませんが、輸出数量指数の品目別分析が見える「輸出数量指数の要因分解(地域別、品目別)」グラフを引用します。 電気機器や一般機械がしばしばマイナス要因になっていることが見て取れます。「品目別寄与をみると、鉱物性燃料の輸出が3月から5月にかけて一時的に急増してプラス寄与となる一方、電気機器の輸出が6月及び7月にマイナス寄与となっている。また、輸送用機器は2012年1月にプラス寄与が大幅に拡大し、それ以降は緩やかな伸びとなっているものの、一貫して増加に寄与している」
このリポートは地域別にも「輸出数量の持ち直しの動きが緩やかになった背景」を検討、「中国については、日本が優位性を保っていた電気機器や輸送用機器などがこのところ相対的に低迷」「アメリカについては、大手自動車メーカーの主要車種の生産が2013年春ごろから現地に移管され始めたことに伴い自動車の輸出台数・同関連部品のシェアが低下傾向にある」「タイについては、自動車・同関連部品における日本のシェアが高いため自動車初回購入支援策終了の影響を受けやすかった」など、日本側の低迷理由をあげています。工場海外移転による空洞化もやはりあります。
2011年末の『底は打った貿易収支、残る余裕を再建に生かせ』で心配した経常収支の赤字が急速に迫ってきています。9月の経常収支は5873億円の黒字でしたが、これは円安メリットで海外子会社が多額の本社送金をした結果であり、本当は1252億円の赤字でした。貿易外の所得収支に頼れる期間は短そうです。輸出数量の回復・拡大が出来なければ国債の国内消化が危ぶまれるようにもなります。未だに実効性がある政策を打ち出していないアベノミクスで株高になったと浮かれている場合ではありません。成長戦略を真剣に考えねばなりません。
なお、比較資料としてドル円為替レートと輸出数量指数の詳細グラフを付けておきます。
内閣府から10月末にマンスリー・トピックス「輸出の増勢に一服感がみられる背景について」が出されています。比較的順調だった8月までのデータしかありませんが、輸出数量指数の品目別分析が見える「輸出数量指数の要因分解(地域別、品目別)」グラフを引用します。 電気機器や一般機械がしばしばマイナス要因になっていることが見て取れます。「品目別寄与をみると、鉱物性燃料の輸出が3月から5月にかけて一時的に急増してプラス寄与となる一方、電気機器の輸出が6月及び7月にマイナス寄与となっている。また、輸送用機器は2012年1月にプラス寄与が大幅に拡大し、それ以降は緩やかな伸びとなっているものの、一貫して増加に寄与している」
このリポートは地域別にも「輸出数量の持ち直しの動きが緩やかになった背景」を検討、「中国については、日本が優位性を保っていた電気機器や輸送用機器などがこのところ相対的に低迷」「アメリカについては、大手自動車メーカーの主要車種の生産が2013年春ごろから現地に移管され始めたことに伴い自動車の輸出台数・同関連部品のシェアが低下傾向にある」「タイについては、自動車・同関連部品における日本のシェアが高いため自動車初回購入支援策終了の影響を受けやすかった」など、日本側の低迷理由をあげています。工場海外移転による空洞化もやはりあります。
2011年末の『底は打った貿易収支、残る余裕を再建に生かせ』で心配した経常収支の赤字が急速に迫ってきています。9月の経常収支は5873億円の黒字でしたが、これは円安メリットで海外子会社が多額の本社送金をした結果であり、本当は1252億円の赤字でした。貿易外の所得収支に頼れる期間は短そうです。輸出数量の回復・拡大が出来なければ国債の国内消化が危ぶまれるようにもなります。未だに実効性がある政策を打ち出していないアベノミクスで株高になったと浮かれている場合ではありません。成長戦略を真剣に考えねばなりません。
なお、比較資料としてドル円為替レートと輸出数量指数の詳細グラフを付けておきます。