パソコンで音楽ならハイレゾよりまずワサピを [BM時評]

 PCオーディオでハイレゾ機能搭載商品が急速に増えてきました。しかし、それに手を出すならWASAPIが先でしょう。ウインドウズパソコンを使っている方、劇的に音が良くなること請け合いの使い方をお試しあれ。WASAPIとはウインドウズ・オーディオ・セッション・アプリケーション・プログラミング・インタフェースの頭文字です。Windows Vista以降のパソコンで標準搭載機能です。これまでのパソコンでもCDは聞けましたが、実は音質は良くなかったのです。WASAPIを使って初めてCDプレーヤ並になったと言えます。問題は買ってきたパソコンにWASAPIを使うソフトが備わっていない点です。

 ソニーの「Music Unlimited」などの音楽配信サービスを利用された方は音質が良いことに気づかれると思います。音楽配信サービスは音楽のデジタル盗み取りを防ぐために、ウインドウズOSのミキサーをパスして直接、音を出力します。音質への配慮が無いミキサーが音を悪くしていました。透明感の高い楽器や声を通すと、響きにニジミのようなモヤモヤ感が付与されているのが分かります。いわゆる歪で、ちゃんとしたオーディオ機器は歪率に気を配って設計されますが、ウインドウズOSのミキサーは未だに無頓着です。

 「WASAPI排他モード」を使うと音楽配信サービスソフトのようにミキサーをパスして音を出してくれます。前のウインドウズ時代からこの機能を使う面倒なセッティングをしてきました。先月、ウインドウズ7・OSが機能停止してハードディスクを買い替えインストールをやり直したのを機会に、「MPC-HC」というフリーソフトのWASAPI利用機能で間に合わせることにしました。《Media Player Classic - Homecinema》から最新版がダウンロードできます。AVCHD系の動画も見られる高機能AVソフトです。  上の図のように、「表示」タブ一番下の「オプション」画面を呼び出します。出力の項目にあるオーディオレンダラを「MPC-HC Audio Renderer」に切り替えてOKすれば、WASAPI排他モードで音を出すようになります。「排他モード」とは音の出力を独占する意味なので、このソフトを起動すると他のソフトの音声機能が停止されますから、不要なときは起こさないでください。また「MPC Audio Rendererが壊れている、使用しないでください」とのメッセージが出るように、一時停止時などにたまに暴走しますが、停止して起動し直せば問題はありません。

 メインのデスクトップパソコンは『続・ベルリンフィルに耐えるPC用オーディオ』で紹介した2万円クラスのUSBオーディオインターフェースを使っています。今回は一般向けに、2009年の東芝ノートパソコン(15.6型)ヘッドフォン端子で音の比較をしました。ハーマンカードンの小型スピーカを積んだ音にこだわった機械で、AKGのK404という3千円台で買えるヘッドフォンでも明瞭に差が出ます。ちりちりした歪が除去されたクリアーな音になります。もちろん何万円かする上級機なら当然、明解です。

 CDよりも高精細の波形が扱えるハイレゾ機能のUSB機器に買い換えたいとも考えています。健康診断の耳の高音チェックでもあまり衰えていないので楽しみにはしていますが、アルバム1点3000円くらいを新たに買い揃えるのは大変です。月980円の「Music Unlimited」で以前に興味があったけれど聞けなかったアルバムをたくさん聞く方が面白いとも感じています。最近、美空ひばりの重厚なコレクションが加わったのも魅力です。この不世出の歌手、実はオリジナル曲はあまり聴きません。持っているアルバムは晩年に本人が選んで歌った「日本の名曲」シリーズ中心で、どれをとってもオリジナル歌手より深い読み込みと圧倒的に多彩な表現力にまいります。そのカバーソング集が大量に聴けるようになりました。ハイレゾ機器への投資は今少し待ちましょう。