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第426回「分かっていて打てない田中将の魔球を科学する」 (2014/05/15)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 大リーグに渡って開幕から無傷の6連勝を飾った田中将大投手。最近は米国で投げる投手が減った高速で落ちる魔球「スプリット」が威力を発揮しています。空振りするか、引っ掛けてゴロになる仕掛けを科学しましょう。かつて活躍した佐々木投手や野茂投手のフォークボールは同じ落ちる球でも無回転なので、最近の打者は見抜いてしまいます。田中のスプリットは直球に近い高速で、しかも直球のような回転をして落ちるから始末が悪いわけです。大リーグは球の軌道を自動測定するシステムを導入、リアルタイムで見せてくれるようになりました。この日、メッツのレッカー捕手からスプリットで2三振を取った場面を切り出して引用します。


 最初の三振では高めの球から入っているのに、2回目の三振では低めから攻めています。しかし、いずれも3球目までに時速150キロ近い直球を2つ使って、速球を意識させているのは同じ手法。そして、いずれも4球目に緩い時速130キロ台半ばのスライダーです。どちらも空振り三振になる5球目では、時速141キロのスプリットがストライクゾーン真ん中から大きく落ちています。打者は直球対応で振りに行ったけれど、ボールはそこには無いのです。

 なぜ振りに行くのか、佐々木投手たちのフォークボールを取り上げた2000年の第92回「新・日本人大リーガーへの科学的頌歌」で打者の生理をこう説明しています。「バットスイング開始からインパクトまでの時間は0.17〜0.2secは要する。したがって、36m/s(130Km/h)以上のスピードのボールであれば、投手板とホームベースの中間地点にボールが到達した時点でスイングを開始しなければならない」

 例えば「2回目の三振」の2球目の直球と5球目のスプリットを軌跡で比べてください。ホームベースとの中間地点で判断がつくか――フォークボールと違って直球のような回転まで見せているのですから、極めて困難です。

 投げ方について田中自身が《田中将大「僕がスプリットをマスターするまで」》でこう証言しています。「スプリットはフォークよりも真っすぐに近いです。真っすぐの軌道から打者の手元でスッと変化すれば打ちづらいだろうと思っていました。スピードの緩いフォークは打者に見極められることも多いんですよ。フォークほど投げミスが起きないことも大きいです」「投げ方はフォークのように抜く感覚ではなく、ストレートに近い。腕の振りも同じ意識で、ボールを真下にたたきつけるイメージです。大事なのはしっかりと腕を振ること」

 直球はバックスピン回転で揚力を得ていますから重力に逆らって落ちません。スプリットは回転しながらも微妙に少ないのでホームベースまで来て落ちてしまいます。田中は2010年にスプリットの握り方を覚えて、その微妙さを鍛えてきたのでしょう。大リーグで8試合58回を投げて奪三振66、与えた四球はわずかに7だけと精密なコントロールを誇ります。無敗、連勝記録はまだまだ伸びそうです。

 【参照】インターネットで読み解く!《文化・スポーツ分野》

 【追補】イチローの「レーザービーム」送球がフロックでないと実感する「あり得ない」送球プレイです。《思わず「うわ、すげー!!」と歓声をあげちゃうイチローのミラクルスロー》

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