絶滅危惧種指定、ウナギの食べる心配報道は異様 [BM時評]

 国際自然保護連合がニホンウナギを「近い将来、絶滅する危険性が高い」として絶滅危惧種に指定しました。メディアは食べられなくなる心配とセットで報道しますが、保護に失敗した日本はむしろ歓迎すべきなのです。昨年夏に第371回「食べられぬ心配だけで保護意識が無いウナギ報道」で紹介した稚魚激減グラフを掲げます。積極的な保護策を打ち出せぬまま最盛期の50分の1まで落ち込んでしまい、はっきり言って手遅れ状態です。  自前の稚魚が採れなくなって日本がしたことは中国・台湾からニホンウナギ、さらにヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、最近では東南アジアのウナギの稚魚まで大量輸入して、それぞれの資源存続を危うくしただけです。水産先進国としてニホンウナギの完全養殖に近づきつつはありますが、野生資源保護には全く無策でした。

 今年はニホンウナギ稚魚がすこしだけ多めに取れました。それでマスメディアはは蒲焼きの値段が下がるとはしゃぎました。漁業資源の持続性が疑われるクロマグロの幼魚と合わせて第422回「幼魚豊漁で失われる水産資源、異を唱えぬ鈍感報道」で批判した通りです。

 報道の姿勢が読者・視聴者にベースを置くのは常識です。それが「ウナギ消費者」で良かったのは資源がこんなに細くなる前の話です。絶滅危惧種に指定された段階では、当然ながらどうやって保護していくのかを考える視点に転換すべきです。主要メディア横並びで保護を求める国際的な世論の高まりや国際的な取引規制を心配して、日本がどうすべきか論じないのはあまりに異様です。