世論調査設計のお粗末でブレる集団的自衛権の賛否 [BM時評]

 世論調査がこれほど恣意的に設計されて大きな政治判断を歪める例を知りません。集団的自衛権をめぐる調査は回答誘導にならないために選択肢を対称の形に設定する世論調査大原則を外し、自己正当化するから呆れます。3択方式で尋ねたメディアは「賛成優位」を報じ、2択方式の場合は「反対多数」になっています。3択の中間選択肢が「中立」でなければ調査する前から結果は見えています。

 毎日新聞は3択と2択の両方を実施して《Listening:<記者の目>集団的自衛権と世論調査=大隈慎吾(世論調査室)》で分析しています。

 まず読売・産経の中間選択肢を見てください。《読売新聞は、5月9〜11日の調査で「全面的に使えるようにすべきだ」8%、「必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ」63%、「使えるようにする必要はない」25%だったことから「容認派多数」と報道した。産経新聞・FNNの調査(5月17、18日)では、「全面的に使えるようにすべきだ」10・5%、「必要最小限度で使えるようにすべきだ」59・4%、「使えるようにすべきではない」28・1%》

 バイアスが掛かったと言うよりも安倍政権の意向そのものを中間選択肢にしているのですから、政権御用達メディアの面目躍如です。産経は《2択方式の毎日新聞や朝日新聞、共同通信は、賛成が3割前後、反対が5割台後半となった。政府・与党が目指す「限定」に相当する選択肢がなく、「限定」と回答したい人が反対に回った可能性もある》との分析を1日付で出しています。世論調査大原則など眼中になかったと告白しています。

 毎日は4月《「全面的に認めるべきだ」は12%、「限定的に認めるべきだ」は44%、「認めるべきではない」は38%だったことから「行使『限定容認』44%」と報道》し、ついで《3月と5月の二択調査で賛否の割合はそれぞれ賛成が37%、39%、反対が57%、54%とほぼ変わっていない》とします。

 それでも国民世論の実態はそれぞれ映しているとの分析ですが、この中間選択肢も妥当でないとすぐに分かります。3択の中間にあいまい度が高い選択肢があると、そちらに誘導される傾向が強いのは調査経験者の常識です。各社とも勉強し直してください。

 【参照】ネット調査が世論調査の代わりになると誤解している方も多いようなので、第220回「京大さん、日経さん、ネット調査信頼は無茶」