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第501回「東アジア4カ国のノーベル賞事情と論文数推移」 (2015/10/09)

(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 ノーベル賞の科学部門で東アジア4カ国から日中3人が受賞しました。日本21人、台湾3人、中国1人、韓国0人が累積です。中国の受賞は日本以外で初の純国産の研究であり、取り残された韓国のショック大です。ノーベル賞は当該分野研究の突破口を開いた仕事に与えられます。科学的トライの総量が大きくなると画期的な仕事が現れる確率が高くなると考えられます。その国での学術論文の生産量が目安になるので、1995〜2011年で4カ国の論文数推移をグラフにしました。日本の将来の危うさが見えます。


 3人の受賞者を出している台湾は人口2300万人と少ないこともあり一番下です。1957年に物理学賞で2人、1986年に化学賞で1人の受賞ですが、いずれも米国の大学教授であり台湾産の仕事とは言えません。中国はいまや米国に次ぐ世界2位の論文生産国ですが、累積量を考えるとこのグラフの期間でも日本よりまだ少ないと言えます。日本には1980〜1990年代にも大きな蓄積がありますから、ほとんど国産の研究で21人もの受賞者を出しているのは当然でしょう。

 この観点から言えば、韓国の論文生産累積量は大した量ではなく受賞ゼロは無理からぬ所になります。しかし、中央日報の《【社説】中国までノーベル賞の隊列に…落ち着かない韓国は》には、ひとり取り残された無念が漂います。

 《毎年ノーベル賞が発表されるこの時期になると韓国の私たちは、競争国である日本と受賞実績を比べながら神経を尖らせた》《ところが今回は中国までも登場した。それでも産業化ではまだ韓国に遅れているとみていた中国が科学分野のノーベル賞をもらい始める現実を目の前で見ることになったのだ。日本は昨日、物理学賞も再び受賞した》

 韓国の研究活動は実用研究志向に過ぎ、ノーベル賞が出るような基礎科学分野が軽んじられているとは韓国メディアでも指摘されていました。《これはやばすぎる:日本の工学系論文数はすでに人口5千万の韓国に追い越されていた!!》に学問分野別の各国論文数ランクがまとめられています。

 韓国は物質科学、エンジニアリング、コンピュータ科学の工学系分野で日本を追い越すまでになりました。しかし、物理、化学、生物など基礎分野では日本と歴然とした差があると知れます。一方、中国は物理、化学、数学のほか物質科学、エンジニアリングでも米国も抜いて1位です。これからは侮れない存在になると確認できます。

 ただし、今回、マラリア治療薬「アルテミシニン」発見で受賞した屠ユーユー氏(84)のケースでは素晴らしい仕事を自国内で評価できないシステム欠陥も露呈しました。毛沢東が指示した532プロジェクトが1978年にアルテミシニンを発見とした際に、発見者の名前は明かされませんでした。各種の圧迫の下で博士号も持たず共産党・政府機関へのコネもない彼女は発見者として主張を貫き、ラスカー賞受賞で国内より先に国際的に認められました。

 人口が日本の10倍もある中国で膨大な科学的トライが進行すればブレークスルーになる仕事が現れて当然です。これに対して日本では第500回「大学ランク退潮は文科省が招いた研究低迷から」で指摘したように、2004年の国立大学法人化から論文生産が減り続けています。

 普通の企業経営で言われる「選択と集中」が学問分野で出来るとの安易な不見識が政府にはびこっています。再びグラフを見て下さい。韓国との人口比は2.6倍、台湾とは5.6倍です。人口あたりの論文数で両国に張り合おうとすれば日本の論文数は現在の5割増しにもならねばなりません。それが減っているのですから、この10年はともかく、近未来ではノーベル賞は激減すると断じて構わないと考えます。

 【参照】第480回「瓦解していく科学技術立国、博士進学者は激減」

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