第510回「米が小学校にコンピュータ科学導入は女子に効く」

 余り話題にならなかった12月のニュース、米国が小学校の科目にコンピュータ科学を導入が気になりました。比較的関心が低い女子へのテコ入れに効果がありそうで米国とのIT教育の格差が更に広がる恐れを感じました。情報教育が高校の必修科目になっているのに成果が出ない日本と違い、米国のほとんどの高校でコンピュータ科学は教えられていなくてもIT人材は分厚いです。ただ、米国でコンピュータ科学を学ぶ大学生は1984年には女子が37%を占めたのに近年は18%に半減しており、小学校からの教育導入に目覚まし効果があるとすると男子より女子の人材育成に効きそうです。

 ウォールストリートジャーナルの《米国でコンピューター科学が小学校の科目に?》はこう報じました。《米国の教育制度に関わる超党派の法案が10日、オバマ米大統領による署名を経て法律として成立した》《コンピューターサイエンスが算数・数学や英語(国語)と同じくらい重要な科目として位置づけられた》

 事情はこうです。《労働市場では技術をもったプログラマーの需要が増えている一方、供給が追いついていないのが現状だ。コード・ドット・オーグによると、全米でコンピューター関連の求人は60万件超ある。だが、コンピューターサイエンスの学位を持って就職した人は昨年、わずか3万8175人だった》

 女子学生の関心低下については《米国でコンピュータを学ぶ女子学生の比率が激減》が原因を伝えています。

 《パソコンが一般家庭に普及し始めたのが1984〜85年ごろだったことが背景にあるのではないかという。コンピュータにはまってゲームなどを仲間とするのは専ら男子となり、「コンピュータは男の子のおもちゃ」という認識が広がり、親も専ら男の子にコンピュータを買い与えた。その結果、大学入学時点では、男子と女子の間でコンピュータになじみ使いこなすスキルの差が生じたことが影響している》

 IT教育に熱心なワシントン大学についてのニュースで、昨年、コンピュータ科学の学士号を取得した人の30%が女性で、全米平均の2倍だったとありました。グーグルが社員の男女比を公表しており、IT企業として名高い同社でも女性は3割に留まる傾向にあります。米国にして男女差は大きいのです。日本はOECD諸国の中で理系女子大学生の比率が最低クラスであり、女性人材が少ないのは言うまでもありません。

 国内でもIT人材不足は深刻になっており、2013年閣議決定の「日本再興戦略21」で「義務教育段階からのプログラミング教育等のIT教育を推進」がうたわれています。しかし、拙稿第483回「日本のパソコン技能がOECD最低報道の誤解」でも取り上げたように、高校の情報教育がうまくいかないのも上手に教えられる人材に乏しいからと考えています。小中学校に持ち込むとしたら、同じ問題が発生します。また、欧米には存在せず、国内で大きなパソコン無縁層問題も影を落としています。