第610回「反日迎合姿勢の韓国メディアに韓国読者が異議」

 実質的に断交になりかねない日韓関係に韓国メディアで憂慮する声が広がっていますが、文在寅政権は馬耳東風です。本来なら政権を牽制する機能を持つメディアが反日を煽ってきたと指摘する韓国読者が現れています。28、29日に迫った大阪G20で議長の安倍首相と首脳会談が出来ないのは韓国だけと焦っているのですが、昨年のいわゆる徴用工への最高裁・賠償判決確定で韓国主要メディアは今日の状態を心配するどころか、判決に喝采していました。判決賠償で差し押さえた日本企業の韓国内資産を現金化した場合に、政府は韓国政府に損害賠償請求する方針が明らかになり、実質断交状態に入ります。

 保守系のサイト「趙甲済ドットコム」に21日に掲載されたコラム《韓日外交問題の朝鮮日報の態度に問題が多い》(韓国語)は冷静に歴史的経緯を振り返り、説いています。

 《日帝時代に朝鮮人が当時の戦犯企業に徴用で連れて行かれ被害を受けた部分は、1965年の韓日請求権協定で終結された問題である。ところが、それから数十年が過ぎ、私たちの裁判所は、多数の日本企業を「戦犯」扱いし、すでにすべて終わったことを、私たちの一方的な論理で裏返してしまったのだった。もし、日本の裁判所が、韓日請求権協定を否定して現日本政権が「昔の池田大臣、佐藤内閣の判断には問題があった韓日協定は拙速だったので認めることができないからその時、韓国が持っていったお金を出せ」とすればどうか。そのお金が注ぎ込まれたポスコのような企業の日本支社の資産に差し押さえをするなら、これは軍事戦争の名分になるほどの重大なことである》

 請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決したというのが日本政府の立場であり、韓国政府もムン・ジェイン政権になるまでは同じ立場でしたから、朴槿恵政権下で最高裁のヤンスンテ前長官は賠償判決でひっくり返せば手が付けられない事態になると判決を出すのを渋っていました。しかし、左派のムン政権は最高裁のメンバーを入れ替えて判決を出させ、当時は保守系の朝鮮日報さえ賛同しました。

 《朝鮮日報の場合は「ヤンスンテ最高裁判所は、朴槿恵政府を満足させるために裁判を遅らせ、被害者の救済を不可能にしたという批判を避けることができない」と批判した。日本との外交問題などを懸念して裁判に慎重を期そうとした長官の態度を「朴槿恵政府と共謀し裁判遅延させる」と非難しながら。朝鮮日報が偽善的なのは、そのような批判などを思う存分しておいても、わずか数ヶ月後に日本との外交摩擦を懸念する上記のような社説を平然と出すからである》

 韓国のネットを見ると日韓関係を心配する声は少数派で、経緯はどうでもよくて賠償と謝罪を求める声が圧倒的多数派です。韓国メディアの報道も依然として過去・現在の事実関係をきちんと伝えず、反日世論迎合的です。中央日報日本語版の《安倍氏、韓国に砲門「これからは韓国が国際法と約束を守る番」》は安倍首相が《今回は地上波テレビに自ら出演し、韓国に対する批判の程度を高めた。来月の参議院選挙を控え、韓国に対して不満のある保守層有権者を狙ったものではないかとの分析もある》と勝手な憶測を書いています。これを、この記事の韓国語版に付いたコメントは批判します。

 《安倍首相の発言は正しい内容である。問題の本質は、大法院の判決が請求権協定に違反した事だ。記事に書いている日本国内の選挙とは、無関係である。安倍首相は、韓国が国際法(請求権協定)に違反している事を述べているだけだ。安倍首相の発言を批判する韓国人は、1965年に日韓両政府が「請求権協定」の解釈について合意した文書を理解する能力が不足しているようだ。彼らは、韓国語を読む能力があるのだろうか?WEBを検索すれば、誰でも、その文書を読める》

 ムン政権の暴走ぶりは第608回「監視社会化と日韓約束否定:中韓の確信犯的暴走」で指摘しました。韓国の社会と秩序を崩壊させる革命政権ぶりがますます露骨になり、朝鮮日報日本語版の23日付コラムでは《(任期)5年限りの政権に国をひっくり返す権限などない》と悲鳴が上がっています。しかし、メディアは最初は暴走を止めるどころか煽っていたと、数年来ウオッチしてきた者として敢えて主張させていただきます。今ごろになって政権批判の論陣を張っても、煽られて政権と一緒になって暴走している大衆は聞く耳を持たず手遅れです。外交で孤立するだけでなく経済面でも急ブレーキが掛かっているのに政権支持率がさして下がらず、5割に近い状況がその表れでしょう。