第626回「感染広めた4万人宴、北京など新型集団発症に」

 中国の新型肺炎で4万人が参加する宴会が感染広めた疑い濃厚。蔓延を止めるのは非常に困難になり、26日の患者数2744人のうち発生源の湖北省は半分に減り、広東・北京・上海など新たな集団発症拠点化の勢いです。23日に封鎖された武漢市の市長が「既に500万人が抜け出した」と言っているように、感染者が全土に拡散してウイルスをばらまいている状態です。ネット取材している過程で、19日に「万家宴」と呼ばれる4万人が参加する超大規模宴会が武漢で開かれたと知りました。新型肺炎の飛沫感染を心配している時期に膨大な人が集まって飲んで食べれば、1人の感染者がウイルスをうつす相手の数が飛躍的に高まります。武漢離脱者に相当多数、感染者を増やしたと心配すべきで、ウイルスが変異して感染力が高まったとの見方より蓋然性が高いでしょう。文中に万家宴の写真を引用してあります。(注:万家宴の日付が18日とする記述もありますが、最初に引用した記事に従います)  患者数と死亡者について、国家衛生健康委の発表データをグラフ化しました。20日の患者数は291例から始まっています。6日後の26日で2744例と10倍に近い急増です。人民日報の地域版で調べると26日に広東146例、北京68例、上海53例となり、3日前の23日に広東26例、北京10例、上海9例だったのと比べて劇的に増えています。北京で12例、上海で23例が市外からの移入者とされており、ほとんどが湖北省からでしょう。移入分を除いてもヒト-ヒト感染の強力な進行が疑われます。死亡者も20日の6人が26日は80人へ激増しました。  上の写真は2019年の「第19回万家宴」のものですが、今年もほぼ同様でしょう。一部分を写しているものの広大なテーブルにぎっしりの人波。今になって見れば空恐ろしくなる絵です。《武漢肺炎の第一線医師:大発生があります》(中国語)に掲載されていたのを引用しました。医師は現地病院の設備や装備品の深刻な問題点を指摘した後で、死亡者2名に62症例が確定しているのに武漢の保健当局は警戒を緩めたと糾弾します。問題の重要性と深刻さを認識せず、各家庭から料理を持ち寄る40000人の宴会をやってしまいました。

 武漢市長は中央のCCTV記者とのインタビューで根拠を示さずに「万家宴で感染はなかった」と抗弁しています。しかし宴会前17日の武漢市衛生健康委の新しいコロナウイルス感染症の肺炎発生通知(中国語)には《新しいコロナウイルスに感染した肺炎の以前にリリースされたケースの疫学的データの分析から、いくつかのケースが華南海鮮卸売市場との接触の履歴がなかったことを発見しました》と書かれています。市場で売られていた動物からでない感染、即ちヒト-ヒト感染を推定しなければならなくなって超大規模宴会はないでしょう。

 海外での患者発生はベトナムで中国人親子のヒト-ヒト感染が報告されたのが特異ケースで、各国とも散発数例ですから想定範囲にあると見えます。武漢からの各国在留民退避が計画されていますが、国内で2週間は隔離するフランスのような対応になるでしょうから問題は起きないでしょう。先日の第625回「新型・武漢肺炎の流行、今週末が今後占う岐路」で心配した海外への影響は限定的であるものの、集団発症は勢いづくでしょうから中国国内はどう収拾するのか想像もできません。武漢保健当局の緊張感の無さが決定的だったと言えても後始末には無力です。