第632回「新型コロナ激動の4月、米国は大量死者を予測」

 自粛要請だけで全く見通しが示されない日本の新型コロナウイルス禍です。トランプ大統領が経済正常化を延期した経緯をフォローすると、米国専門家は死者8万人前後を覚悟すべき高いレベルの予測を提示していました。わりに早期にピークに達し、収束を見込んでいる予測の信頼度を評価するのは無理ながら、ネット上で示された予測グラフを引用、紹介します。3月三連休での大阪・兵庫の行き来自粛要請、あるいは現下の東京での流行予測に示された日本政府研究班試算はあまりに物足りなくて、比較していただきたいと思います。世界のサイエンスをリードしている米国だけのことはあります。予測は3月31日現在で更新されたもので、最初は米国で累計3000人台に乗った死亡者数の予測です。《COVID-19 Projections》から引用します。  1日あたりの死者は全米で現在は500人程度ですが、急増して4月15日にピーク「2,214」を予測しています。予測の幅は上下2倍から半分まで取っています。死者の累積値が以下のグラフです。  最終累計死者「83,967」の予測値に対して上下4万から15万程度の幅が取られています。5月1日の時点で6万が予測されているのも、ウオッチしていくポイントでしょう。  患者急増で医療資源が足りなくなり、既に現場から悲鳴が上がっています。これも予測されていて、死亡者同様に4月15日前後にピークが来るようです。病床需要のピークは「220,643」で、「54,046」が足りなくなると見られています。集中治療室の病床数も「32,976」必要なのに、「13,856」が不足です。人工呼吸器は「26,381」台がピーク時に要ります。現在の増産体制では間に合いません。

 以上の全米集計は各州ごとに違う状況を予測計算してまとめています。州ごとに流行の遅速があります。現在、最も多くの患者を出しているニューヨーク州についてのグラフを見ましょう。  ニューヨークの死亡者ピークは4月10日で1日「827」が提示されています。  医療資源の利用ピークは9日で、必要病床「73,620」に対して「60,610」も足りません。利用可能ベッドは「13,010」しかないとのグラフです。「11,320」が必要になる集中治療室の病床も全く足りません。予測通りなら大混乱になります。

 ホワイトハウスなどの感染症専門家は必要な措置を取っても死者10万人が出る可能性を口にしています。トランプ大統領が31日、米国民に対し「新型コロナウイルスとの戦いで非常に厳しい2週間が待ち受けている」と発言した背景にこうした予測があるようです。米国に特派員を出している日本の既成メディアが政治家の断片的な発言だけ伝えて、何がどう起き、進んでいるのか「底流」に無関心なのは嘆くべき弱点です。

 ウイルス震源地・中国では新規患者発生が止まりつつあるとしていますが、無症状の感染者をカウントしていなかった杜撰さが表に出てきました。無症状でも感染力はあまり変わらないと報告され、4月1日から発生状況が公表されることになりました。第630回「中国の新型肺炎、統計激増でも減少傾向は不変」で紹介している患者発生に無症状43,000例が追加されるべきだと言います。また、各国の流行状況を見れば中国で公表の死亡者数3千余りは少なすぎます。春節(旧正月)連休で農村などに帰省した出稼ぎ労働者はまだ完全には職場復帰していませんし、休校措置が取られている学生1億人も都市に戻れていません。4月は経済活動を元に戻して新型肺炎を封じ込められるのかが問われています。