第654回「第5波収束原動力はワクチン完全接種急増」

 新型コロナ第5波は感染者発生がピークの3分の1程度に減りました。さらに減少傾向が続く中、都道府県別にワクチン完全接種率と人口あたりの新規感染者数がどう分布しているか調べると、決定的な役割を果たしたのは完全接種急増だったと判明しました。感染急減が著しくて一部で不審に思われている東京に比べると、大阪は完全接種率が4パーセントポイントほど少なく、それに相応する注射の所要時間、1週間程度の遅れで東京に追随、急減少して行くようです。9月12日現在で政府がまとめた都道府県別の状況を分布グラフにしました。  接種率44%の沖縄から62%の山口まで左上から右下に向かって直線状に、流行が激しかったり人口が多い都府県が並びました。接種率増加が感染減少に結び付いています。また、人口が小さな県や既に「ステージ3」以下まで下がった県が中央下に集まっています。感染は人とウイルスが接触する機会が多数あって起きる確率的な現象ですから、ワクチン予防効果が良く見えるのは流行があった大きな都府県になります。

 状況がまだ悪い沖縄と大阪、愛知のほか東京、兵庫、京都、神奈川、千葉、埼玉など大都市圏で完全接種50%以下であり、遅れが感染収束に響いているのが見てとれます。50%超えの福岡、奈良、岐阜、高知、熊本、和歌山などは順当に感染を下げています。一番右下の山口は直近7日平均感染者が12人を切りました。完全接種率は8月初め3割だったのに9月15日に全国52.6%まで到達し、今後も1週間に3-4%ずつ増えていくと見込まれます。

 政府が9月1-3日の期間でまとめた結果では、ワクチン接種歴別の人口10万人あたりの新規感染者数は、未接種で「59.9人」、1回のみ接種で「20.5人」、2回の完全接種で「4.5人」となり、予防効果の差は大きいです。

 全国的に完全接種40%前後に到達した8月20日から25日にかけて、各地で感染者数の上げどまりや減少への転換が観測されました。第653回「ワクチン完全接種5割の8月末まで好転無しか」(8/5)で予測したよりやや早めでした。接種経緯を比べる対象にした先行の欧州諸国は現在、完全接種が6-8割に進んでいます。その後の動きと日本の将来予想について近くまとめたいと思います。