第22回「太陽を友に暮らそう」 (97/10/09)

 京セラ、シャープ、三洋電機など太陽電池メーカーが、それぞれ月産5,000キロワット(kW)と現在の数倍規模へ生産設備の増強に乗り出した。太陽電池は電卓の電源など発電容量が小さい用途には広く使われているが、3kW前後もある住宅用太陽光発電システムはまだ商業ベースには乗っておらず、導入しようとする人は、モニターの名目で通産省資源エネルギー庁の補助金をもらう。この補助金は「新エネルギー財団」が窓口になって、個人住宅ばかりでなく、集合住宅にも対応する仕組みとなっている。'97年度は、2,000件に満たなかった前年度の5倍にもなる「9,400件」を補助、来年度はさらに上積みする思惑で、'94年に決定された新エネルギー導入大綱で立てられた「太陽光発電を2000年までに発電容量40万kWに、2010年までには460万kWに拡大する」目標に向けて、現在動いている約2万kWから一気に弾みをつけるつもりだが……。

◆電灯線とつなぐのがまず大変だった

 太陽光発電の歴史はそう古いものではない。シャープの充実した太陽電池紹介ページの1つ「太陽電池の歴史」にあるように、'54年に米国ベル研究所で生まれた。人工衛星用など価格が高くてかまわない用途には、比較的早くから高いエネルギー変換効率の電池が出来ていた。

 太陽から地上に降り注ぐエネルギーは1メートル四方にほぼ「1kW」。これをどれだけ利用可能なエネルギーにして取り出せるかが、変換効率である。太陽エネルギーの利用、変換は太古の昔から植物が主役だった。太陽電池について見る前に、山口大の連載講座「地域環境と食糧生産」を読もう。「日本の水田の生産体系においては、麦作ではイネ・転作ダイズ、裏作ではコムギ・二条オオムギなどが栽培されている。太陽エネルギー利用効率は、イネの場合、1.15〜1.94%、ダイズで0.92%である。著者が福岡県において実験より求めた裏作の二条オオムギの太陽エネルギー利用効率は1.09%、北日本の0.6%よりも約80%も効率で、麦作のイネとほぼ匹敵する効率であるといえる。ただし、これらの数値は、植物体に変換されたエネルギーの効率であり、たとえばイネで食用部分の玄米へ変換されたエネルギーの効率を計算すると、エネルギー効率は現数値の約45%になる」

 カード型電卓に使われている太陽電池でも数%はあり、植物とは数段違う。実験室内でのレコードでは、24%を超える例があるが、実用品として間もなく売られるものでは、京セラの「大面積多結晶シリコン太陽電池で変換効率17.1%を達成」、あるいは単結晶シリコンで同様に17%をクリアしているシャープの「'97住宅用太陽光発電システム3シリーズ13タイプを新発売」が挙げられる。生産性がよい多結晶に比べて、単結晶は時間をかけて、じっくりときれいな結晶を造り出すので値段が高くなる。それでも3.26kWのシステムで300万円を切る価格が付けられるようになった。

 太陽光発電システムが普及するようになったのは、政府の補助もさることながら、電灯線と接続して通常の電気と同じ感覚で使えるようになった点が大きい。'90年に三洋電機が太陽電池で家庭のエアコンを動かすシステムを、関西の電気系学会で発表した。家庭の電力用に使おうと考えるはしりの仕事で、朝刊の第3総合面トップにちょっと派手に紹介したことがある。電灯線との接続は望めない時代だから、直流で得た電力をエアコンの直流電源部に流し込んで電灯線との直接接続を避ける知恵があった。当時、見学した太陽光発電の実験ハウスは、巨大な蓄電池室を用意して昼間の電力を蓄え、交流に変換して夜間使う仕組みばかりで、私には実用的なものに見えなかった。昼間大幅に余っている太陽光発電の電力を電力会社に売って、夜間は逆に買えばよいはずが、「外乱要因になって電力の安定供給を妨げる」などの理由を付けて、首を縦に振らない時期が続いた。

 太陽光発電を自宅に持ち込んだ人たちについては「日本の現状・草分け時代」に詳しい。'93年に至って、太陽光発電システムを電力会社の電灯線と接続して、発電量が多いときは電力会社に電気を売り、少ないときは逆に買う仕組みで運転する「系統連系」を成し遂げるパイオニアたちが現われ、壁は破られた。

◆ピークカットの主役にも

 '94年からモニター補助制度発足によって発電を始めた人たちも加えて、太陽光発電普及協会などのグループができた。情報は「我が家の太陽光発電」で手に入る。たとえば、各「発電所」の実績を報告している「1997年・7月度の全国発電所の発電量(規模順)」のデータと、読者の皆さんの支払っている電気料金領収書を見比べると面白い。比べる数字は「kWh」「キロワット時」の単位で書かれているもの。つまり、1kWの電気パネルヒーターを1時間動かし続けた際の消費電力が1kWhであり、比較的小規模の「発電所」でも多くが月間300kWh以上を発電して通常家庭の消費量を賄っている。

 その太陽光発電普及協会が「太陽光発電に関する要望書」を今年7月、政府に提出して、普及政策の見直しを迫っている。「今年の予算111億円、応募9400件の予定というのに、現在申込数2700件にしか過ぎず、それも全て施工に結びつくか不確かで、どうやらかねて指摘してきたように、今年度の予算は、大半使い残す事になりそうです。原因は、太陽光発電システムの施工価格が、そんなに下がっていないのに、国庫補助金だけが、kw当たり年々90万円→85万円→50万円(昨年)→そして本年30万円と、余りにも急激に引き下げられ、個人負担が重すぎる事にあります」「ここ数年せっかく芽生えてきた、太陽光発電普及と市場自立へのムードに、水をさすこと甚だしい予算を早く改めて下さい」

 「太陽光発電システムを設置されようとしている皆様へ」の工事費一覧試算によると、今年の補助では個人の持ち出しが240万円程度に達する。

 余剰電力を売っても初期投資の回収には、30年かそれ以上もかかるだろう。赤字覚悟で始めたパイオニアたちと違って、これから始める人たちには利益にならないまでも、大きな損にならない歯止めが必要だ。補助の問題以上に、私には電力会社との間の電気の売買のあり方と価格が気になる。欧米諸国では、太陽光発電などで発生した電気を、電力会社に買い取る義務を負わせている。ところが、国内では「余剰電力購入メニュー」と称する、電力会社の不確かな「運用」で買い取っているにすぎない。東京電力の「廃棄物発電等からの余剰電力購入メニューの改定について」にみられるように、電力会社側が一方的に左右できる。「将来は買い取り価格が下がるから、太陽光発電なんか入れるのは止めなさい」と電力会社側が言って回っているとの情報を、インターネット上でいくつか読んだ。

 真夏の昼間、クーラーがフル運転する結果生まれる電力消費のピークをどう抑えるか、電力会社にとって大きな問題になっている。そのために、夜間電力を安くして、氷を作って蓄え、昼間の冷房に使わせるシステムまで普及させようとしている。関西電力の「業務用蓄熱調整契約」を見てもらうと、電力単価をなんと「70%」も割引をしていることがわかる。

 こんな苦労をするよりも太陽光発電を普及させたらよい。電気事業連合会のシンクタンク、電力中央研究所の報告書データベースで見つけた「太陽光発電のピーク電力需要削減効果」には「夏期のピーク電力需要値と日射量とはほぼ比例関係にあり、太陽光発電の導入が、負荷平衡化に大きく役立つ」「ピーク電力需要が特に大きい日には、蓄電池を併置しなくとも太陽光発電システムの総合設備容量の50%程度まではピーク電力需要を削減できる」と述べられている。かつて、電力会社の人に「太陽光発電を接続して、天気が良くなったり悪くなったりで供給が揺さぶられてはたまらない」と言われたことがあるが、何のことはない、猛暑によるピーク電力発生と、太陽光発電のピークは日差しという共通原因だから、連系運転しているだけで打ち消してくれるのだ。電力会社はピーク発生に備えて小回りの利く火力発電を多数待機させたり、出力を上下させている。蓄熱調整契約による割引は、設備投資を少なくできる見返りだから、太陽光発電側からは逆に高値で電気を買い取らせる制度を、政府が作るべきだ。電力会社に恩着せがましく電気を買ってもらうのではなく、高値で売ってあげるのが筋だろう。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の需要予測「家庭用太陽光発電システムは普及するか?」には、「1987年段階では、一般家庭用住宅が4000万棟ある。そのうち、22%に3kW級の太陽光発電システムが設置できれば、27.6GWの発電能力を有することになる。集合住宅の建屋面積の半分に変換効率10%の太陽光発電システムを設置できれば、8.13GWの電力を得ることができる。これらが発電能力の12%で稼働すれば発電量は年間37.6TWhとなり、1990年の日本の総発電量95.8TWhと比して無視できない量となる」との記述がある。「GW」はギガワット、即ち100万キロワットのこと。「T」はテラで、ギガの1,000倍。この予測と先の電中研の報告を併せると、100万kW級の発電所を18基分合わせただけの電力ピークカット能力になりうる。太陽光発電との系統連系運転について、「お荷物」とする見方を一変させるはずだ。

◆パッシブソーラーを知っていますか

 太陽エネルギーを利用する方法の内、一番早くスタートしたのは太陽熱温水器だった。子供の頃、お風呂のお湯は簡便な温水器から取っていた。投資に対して確実に実利がある点では今も一番だろう。そして、太陽の利用で、一番知的でチャーミングに見えるのが、パッシブソーラーハウスではなかろうか。建築の機能を生かして太陽を友にしようとする人たちが、今年1月、北海道は釧路で国際会議を開いた。会場に出来たPLEAセンターは、パッシブソーラーの建築見本だ。理屈は後回しにして「PLEAセンター計測(12/16〜12/22)」で、その機能を確かめてほしい。空気集熱と室内環境のグラフが見もの。外気はしばしば氷点下になるが、未明・早朝に少し暖房を入れるだけで、室温は見事に20度以上に保たれている。

 「PLEAセンターの計測概要」に、建物の構造と機器が描かれている。このセンターは太陽光発電や風力発電まで取り入れていて、何が本質か見えにくいので、「OMソーラーのしくみ・冬」のほうを参照に薦めたい。日中、屋根裏を通って暖められた空気を小さなファンを回して床下に送り込み、蓄熱用のコンクリートを暖めてから室内に吹き出させる。熱を利用して温水もつくれる。これだけのことだ。夜は蓄熱が効く。夏になると、屋根裏で熱くなった空気は床下に送らずに外気に出し、暑さをしのぐ。ファンのためにわずかな電力が必要だが、太陽エネルギーにこだわる人は小さな太陽電池を持てば十分だ。

 OMソーラーの名は、発案者の奥村昭雄氏のイニシャルから付けられた。その建築事務所のホームページには、雪深い山形にある「金山町立金山中学校」の建築例が紹介されている。こんなところでも断熱設計を前提にすれば、パッシブソーラーは威力を発揮する。

 パッシブソーラーは、このOMソーラーだけではない。海外でもかなり早くからいろいろな試みがされていたし、国内でも「エアサイクルの家」など、独自の工夫をしたものが、あちこちから発売されている。

 環境に対する負荷が少なく、日々に再生可能なエネルギー、太陽。もう1つだけ面白い利用例「膜蒸留法ソーラー淡水化システム」を挙げておきたい。250万円の集熱器と300万円の太陽電池とがあれば「試験プラントの運転は容易で、平均で40l/hを生産した。ソーラーによる熱源の温度、発電量に大きな変動があっても、性能は安定していた。太陽エネルギー利用の膜蒸留法海水淡水化システムの利点は:逆浸透法のような高圧ポンプが不要で、使用電力が少ない;装置がシンプル;保守にエクスパートを必要としない;バッテリーが必要ない;電源がない場所に設置できる;太陽エネルギーの利用によりランニングコストが掛からない、などである」

 知的冒険心さえあれば、ほかにもいろいろな夢が見られそうだ。

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